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ケルン放送管弦楽団首席ファゴット奏者水間博明さん
「音楽家に聴く」というコーナーは、普段舞台の上で音楽を奏でているプロの皆さんに舞台を下りて言葉で語ってもらうコーナーです。今回はドイツの名門オケ・ケルン放送管弦楽団首席ファゴット奏者でご活躍中の水間博明(ミズマヒロアキ)さんをゲストにインタビューさせていただきます。「音楽留学をすること」をテーマにお話しを伺ってみたいと思います。
(インタビュー:2006年3月)
ー水間博明さんプロフィールー
水間博明さん
ケルン放送管弦楽団首席ファゴット奏者。京都市立芸術大学卒。ドイツ学術交流学会奨学生としてデトモルト音楽大学に入学。ベルリンフィル・カラヤンアカデミー在学。マーストリヒト音楽大学大学院指揮科卒業。プラハの春国際音楽コンクール特別賞受賞。日本管打楽器コンクール入賞。ブレーマーハフェン市立歌劇場管弦楽団首席ファゴット奏者を経て名門オケ・ケルン放送管弦楽団首席ファゴット奏者となる。近年、指揮や作曲、後進の指導に力を注いでいる。
— 簡単な経歴を教えていただいてよろしいですか?
水間 日本の大学4年生の頃に奨学金制度を利用して、ドイツに行くことになりました。デトモルトに来たんですけれども、なかなかそこの先生と合わなくって(笑)。もう1ヶ月で見切りをつけたんです(笑)。この話、留学される方の参考になると思うんですけど、先生が全く自分の思っていた音楽をやる人じゃないと全然お話にならないんです。デトモルトというのは田舎で全くコンサートやオケを聞ける機会が少ないんです。
— そうなんですか(笑)。
水間 デトモルトは本当に田舎で人口が5万人くらいの街なんですけど、だからドイツに来たのに全くプロオケを聴く機会がなかったんですね。
— ドイツってどこの町もしっかりオケがあって、どこの街でも良い音楽を聞けるのかなという印象でしたが、そうでもないんですね。
水間 オケはあるんですけどね。でもそんなにレベルの高いことをやっていないから、ここにいると腐ってしまうなと思ってドイツに来て1ヵ月後に行動に出ました。まずは、ベルリンフィルを聞きに行ったんです。コンサートが終わってからファゴットの首席の方にお会いして、ひょっとしてレッスンしてくれますか?というふうにコンサート後にまるきり初対面でぶち当たって行ったんです。
— ノーアポですか?
水間 電話番号も知らなかった(笑)。それでぶち当たりまして、じゃ明日の朝来いと言われたので、それでレッスンに行ったんです。
— 何も問題なく受け入れてくれたのですか?
水間 何も問題なく。非常にいい先生でした。それでレッスンを受けましたところ、5分位吹いたら、「お前ひょっとしてベルリンで勉強する気あるか?」と聞かれたんです。これがこっちの思うツボでした(笑)。先生に夏からだったら取ってやると言われて、奨学金も出るしもう至れり尽せりでした。カラヤンアカデミーという所に入りましたが、当時全校生徒で26人です。それも選抜されたメンバーですので全員プロになります。そこではアンサンブルもたくさんやらせて頂きました。ほとんど毎月ベルリンフィルにもトラで出させて頂きました。そこで2年間みっちり勉強させて頂きました。
— デトモルト音楽大学はあんまり関係ないのですね(笑)。
水間 もうほとんど関係ないです(笑)。当時は情報があまり無かったので、奨学金も頂いたことだしとりあえずドイツに行ってそこで勉強しようと思ったのですが、やっぱりあまりにも自分の思っていた生活環境と違ったもので、それだったらこの町にいる意味もないなと思いました。そこから行動に出て本当に正解でした。
— カラヤンアカデミーに入るには先生に認められることが必要ですか?
水間 先生に認められるのがまず一番最初です。当時は今みたいに公募していませんでした。当時は先生がまず認めて、今度はベルリンフィルの木管楽器全員を集めてそれで入団試験をするんです。それで合格したらカラヤンアカデミーに入れたんですね。
— どのくらいの人数ですか?
水間 全員で26人だから弦楽器が5、6人かもうちょっといたかな。ファゴットは2人か3人ですね。やっぱり人間なんでもぶち当たっていくことが大事ですね。
— 自分の勢いが大切になるんですね。
水間 そうですね。若い頃は特に。
— プロになるためだけにドイツに行ったのですか?
水間 僕は日本帰ってくる気は無かったんですよ、最初から。ドイツ行った限りは必ずドイツで成功してみせると言う気持ちだったから。
— かっこいいですね。日本の武士という感じがします(笑)。写真でも本当に武士っぽいというか、厳しい心が表に出てるというか、そう見えますよね。
水間 実は武道が大好きです。小学校の時は柔道をやっていまして、高校の時から空手をやりまして、今はずっと剣道を続けているんです。
— じゃ本当に武士ですね(笑)。
水間 戦う音楽家と言われます(笑)。
— 本当に尊敬します。そういう方(笑)。
水間 いやとんでもないです。武道をやっていないと気がたるんでしまうんです。追求すると音楽も武道も一緒なんですよね。どちらも本当に楽しいんです。
— 音楽に興味をもったきっかけっていうのは何でしょうか?
水間 偶然の話なんですけど実家の3件隣にハーモニカの先生がいたんです。それで6歳くらいから20歳くらいまでずっとハーモニカをやっていたんです。
— ハーモニカですか?
水間 ハーモニカが一番最初の楽器です。それから小学校4年かな。京都市少年合唱団という合唱団に入りました。今、指揮で有名な佐度君*いますよね。彼も一緒だったんです。彼は当時からの付き合いで、今もよく電話くれるんですよ。彼は合唱団も一緒で、大学**も一緒なんですよね。(編集注*:指揮者佐渡裕さん・注**:京都市立芸術大学)
— そうなんですか。
水間 京都の大学で、彼はフルートをやっていました。京都は、指揮科はあったんですが誰も生徒はいないですから。彼は、どこも指揮科は出てないです。話を元に戻すと、小学校から中学校3年まで合唱団をやっていました。小学校から中学に入ったら吹奏楽部が無かったんですね。それで自分で吹奏楽部を立ち上げました。
— ないなら作れですね(笑)。
水間 楽器だけは倉庫で眠っていたんですね。だから楽器があるから人を集めようということで、十何人集めて小さいアンサンブル始めました。その時僕はラッパを吹いていたんです。僕が卒業と同時に吹奏楽部はつぶれましたけど(笑)。その後、今、全国大会にも出ていますけど洛南高校という所で1年の頃はクラリネットを吹いていました。
— 結構楽器が変わっていますね。
水間 ころころ変わるんです(笑)。それでクラリネット吹けるといったら勝手にサックスを吹けということになって、ジャズをやる時はサックスを吹かされました。それで例えば行進をする時にトロンボーン足りないというと、お前トロンボーン吹けと言われましたからいろいろ吹けてしまうんです(笑)。
— マルチプレーヤーですね。
水間 結構いろいろやらされましたね。クラリネットばっかりやっていて、十何人で合わせていてもあまり面白くないんですね。それで、「クラブは面白くないから辞めます」と先生に言いに行きました。そうしたら、「お前はファゴットやらしてやるから残れ」と言われたんです。だから高校2年からなんです、ファゴットやったのは。
— なぜファゴットをやらしてもらえるようになったのですか?
ケルン放送管弦楽団首席ファゴット奏者
水間 当時誰もファゴットがいなかったんです。指揮者が宮本先生と言う元ファゴット吹きなので、ファゴットを教えて頂きました。そうするとファゴットは難しいから面白いわけです。
— 高校生が普通にやる楽器ではないですよね。
水間 そうですね。本当面白くなりました。それでもプロになろうとは夢にも思っていなかったんですけど、高校三年の時、その宮本先生が、「水間、ひょっとしてお前芸大を受ける気ないか」と言われたんです。最初は冗談を言っているのかなと思ったんです。でも、よく話を聞くと冗談じゃないみたいでした(笑)。それで宮本先生が、「俺も今まで人に言ったのは一回も無いんだけれども、お前はなんかプロになれそうな気がする」と仰っていただいたんです。
— ご自身では音大に入ろうとは思っていなかったのですか?
水間 全く無かったですね。高校を出たらすぐに就職しようと思っていましたから。当時はそろばんに簿記ですよね。それをやっていました一生懸命。そろばんも2級を持ってます(笑)。だから仕事として全く畑違いの音楽の世界の事を言われましたのでかなり戸惑いました、「冗談やめてくださいよ」と。それでも先生がそこまで言ってくれるんだったら、なんとか一回は挑戦してみてもいいかなと思いまして、高校3年からピアノを始めたんです。
— 高校3年からですか?出来るものですか?
水間 出来ましたね。実技はピアノもファゴットも楽に一年目で入ったんです。でも勉強の方がついていかなくって(笑)。当時は共通一次じゃなくて本当に難しい試験だったんです。それで英語で落とされまして、1年浪人いたしました(笑)。
— 音楽とは全然関係ないところですね(笑)。
水間 全く音楽の関係ないところで落ちるのは悔しいと思いまして、一年間英語をひたすら勉強いたしまして、それで翌年に京都市立芸術大学に入りました(笑)。
— ピアノもすぐに出来るというのは根本的に器用なのでしょうね。
水間 心の中にこう弾きたいというものがあるんです。この音楽はこう弾かなきゃ駄目だという固定観念がありまして、それに向かっていると勝手に指が動いちゃうんですよ。不思議なものですけど。
— ファゴットもそうだったんですか。
水間 そうですね。クラリネットからファゴットは、ただ口と指を変えれば一緒ですから。今でも講習会ではクラリネットもレッスンしているんですけど、クラリネットの先生に習うより良く分かると言われます(笑)。ドイツでもフルートレッスンしましたね(笑)。
— フルートをレッスンしたんですか?
水間 楽器はただ道具なだけであって、音楽自体はどの楽器も同じですし、フルートも練習したことがあるので(笑)。やっていないのはオーボエ、ホルンだけです。あとは全部やりました(笑)。最後にたどりついたのがファゴットなんですね。いまも時々バイオリンとチェロを練習しますが面白いですね。ほかの楽器から学ぶことも多いですね。
— ファゴットの面白さというのは何ですか?
水間 やっぱりこの音色ですね。最高に音色がいいです。
— その音色にはまってしまったんですか?
水間 そうですね。どうしたら次回いい音になるかと追求していくとやっぱりたまらない魅力です。
— 今でもやはり音色を追求しつづけているのですか?
水間 もう永遠ですねこれは。僕の目標は定年になる日に一番良い音出ればいいなと思ってやっています。
— 音楽をやるにあたってドイツの良い点悪い点はいろいろあると思うんです。それはどのようないうものでしょうか。
水間 僕はドイツで音楽をやるという事に関して、悪い点というのは見たことがないんです。オーケストラの中でも、やっぱり各人が個人主義ですから。日本は音楽をやる以前に人間関係のほうが大変なところが多く、音楽に集中できないことがよくありますね。
— なるほど。
水間 ドイツ人でも中にはそのような人もいますけれども、いい先生はやっぱり自由にしています。逆に、今度あいつの講習会があるから言って来いと言ってくれたりします。やっぱり一人の先生ではいろいろな事は習えないということを先生自体が知ってますから、いい先生はどんどんあちこち行かせます。ドイツは個人主義だから仕事が出来る人はみんな認めてくれますし、そういう点ですごく楽ですね。
— 悪い点があるとしたら自分が思っていた条件が整えられない時ということですか?
水間 ドイツでも下の方のオーケストラに行くといやいや仕事を適当にやっている人が多いんですね。ドイツには200ものオーケストラがあるのでいろいろなタイプのオケがありますね。昔吹いていたオケは、みんな全部自分が正しいと思っているので、人を非難ばかりしましたね。
— ばらばらなんですね。
水間 今のオケ*ならちょっとずれたらみんなが合わそうという気もあるし、ほぼ全員がチューナーを見て吹いています。それに常に自分を厳しくしています。だから音楽のレベルも高いですよね。(編集注*:ケルン放送管弦楽団)
— プロとしての意識も高いということですね。
水間 まるきり違います。僕らの場合は、放送局だからすべてライブで流れるんです。だから嘘をつくと視聴者に見られます。いいかげんな仕事は出来ないですね。
— 厳しいですね。
水間 オペラは一回限りで何をしてもすぐ終わりますけど、放送局のオーケストラは結果が残りますからやっぱり厳しいですね。
— ドイツを留学先にすることで一番重要だと思うことは何ですか?
水間 ドイツに関わらず何をしに留学に来るかというのが一番だと思います。ただ経験だけを積みに来るのか、必ずドイツで仕事をするために来るのか、それとも日本で仕事をするためにドイツに留学して勉強するのか。それを明確にする必要があると思います。僕の生徒でもあと1年頑張ればプロになれるのに、そこで彼氏ができちゃって練習をしなくなって駄目になった子いっぱいいますから、本当にもったいないです。だからきちんと明確に目的を設定しないといけないと思います。
— お弟子さんにもそういう話はされているんですよね?
水間 人間集中力と持続力というのはあまり続かないんです。必ずドイツに来てプロになってやると言って、みんな来るんです。だけど本当に3年間ひたすら練習するというのはすごく厳しいことです。
— 水間さんが直接、お弟子さんに言っても難しいのですね。
水間 難しいです。やるのは生徒ですからね。だから明確に目的意識を持ってドイツに来るというのが一番大事ではないかと思います。
— なおかつ持続的に固い決意を持って留学に望むということですね。
水間 日常の九割が誘惑ですから。その誘惑にどれだけ負けないかということですね。人間は厳しいことは嫌だけれど、楽しいことはすぐにのめりこみますからね。
— 仕事を始めるにあたって日本人として有利な点、不利な点はありますか?
水間 有利な点というのは全くないです。ゼロパーセントです。不利な点はもういっぱいあります。例えば仕事をするにあたってオーケストラから招待状をもらわないとオーケストラの入団試験を受けられないんです。例えば一つの席が空きます。そうすると最低でも今60から100の願書が届くんです。それで大体招待されるのが多くて20人。普通のオーケストラはドイツ人から選びます。ということは日本人に招待状が回ってくるのは3回目4回目くらいです。まずそこで不利です。僕は最初、ブレーマーハフェン市立歌劇場管弦楽団に入りましてそこから2年半の間、招待状を一通ももらえなかったんです。プロなのにです。それで3年目に始めて今の所属楽団であるケルン放送管弦楽団から招待状が来ました。もう一発勝負でした。
— 願書の段階で落とされるんですか?外国人だからという理由ですか?
水間 外国人だからという理由。だから全く不利な点だけです。
— ようやく来たのがケルンなんですね。
水間 それもたまたま今隣で吹いてる2番吹きの奏者が学生の頃から日本人の友達がいっぱいいて、日本びいきだったんです。だから招待状をくれたんです。普通のオーケストラだったらまずくれないですね。やっぱり放送局というのはドイツの顔ですよね。だからあんまり外人は座られたくないんですね。
— ドイツ人がいるのが当たり前ですもんね。
水間 ドイツ人が駄目だったらEU諸国です。それが駄目だったらアメリカやオーストラリア。要するに白人ですよね。それからどうしてもいないから呼んでやろうかという感じで呼んでくれます。
— 招待されるのにラッキーな部分というのはあるのですか?
水間 これは本当にもう偶然しかないんです。日本人は1回目2回目で呼ばれないというのは前提にあります。僕もコンクールはいくつか入っていますし、経歴からいえばかなりいい線いっていると思うんですけど、他の放送局では一通も招待状が来なかったですね。
— かなり肝を据えていかないと厳しいですね。
水間 もう命をかける気で、死ぬ気でやらないと無理です。先生が顔の広い場合は弟子が全国に散らばっていますから、先生に電話して頂いて受けさせてくれということもありますね。
— 大学などの学校の先生に付くということと、オケだけをやっている方に付くということとどちらがいいと思いますか?
ファゴットレッスン風景
水間 オケだけをやっている方に付くというのはビザの面でも無理でしょうね。どこかの大学に所属して、自分の好きな先生が他にいればその先生に付くというのがベストですね。うちに来ている弟子達も、どこかの学校には所属しています。
— ビザの問題があるので大学の先生を決めて、それに加えて自分がいいと思っている先生に付くというのが一番良いということですね。
水間 僕も先生に付いていたんですけれども、他のベルリンフィルの先生全員にレッスンを受けに行きました。ドイツはそういうことが出来るんです。
— 他の先生に気兼ねなくですか?
水間 みんな自分のレッスンに誇りを持っていますから。人が何を言おうと関係ないのです。僕は僕のことを言うだけだから、で終わりですね。
— ジャズや吹奏楽などをおやりになって最終的にはクラッシック音楽というものにたどりついたと思うのですが、クラッシック音楽というものは水間さんにとって一体どのようなものですか?
水間 一言で言ってしまうと自分の心の魂の表現ですね。心が安定していないと、音というのは自分もすごい嫌なんです。本当に心が静かで一生懸命努力して出た時の音は自分でも気持ちがいい音がするんですよね。
— 自分の心をそのまま反映してくれる鏡になるわけです。
水間 よく経験するんですけど、アマチュア音楽家でも技術的にはすごく下手なんですけど感激する事は多いんです。だけどプロでも技術的にはすごくうまいんですけど感激しない場合も多いんですよね。ということは、その人が純粋に音楽に取り組んでいるか取り組んでいないのかということが、うまい下手にかかわらず心に響いてくるんじゃないかと思うんです。
— 技術じゃない部分ですね。技術的には下手でも感動する時は感動しますよね。
水間 そうですね。だから人間心に波動を出して、それがお客さんに伝わるんじゃないかと思うんです。
— それは逆に舞台に立っているときも同じように感じますか?
水間 はい。今日こいつ調子いいなとか、こいつ家庭に悩みがあるなとか(笑)。やっぱり家庭に悩みがあると音が攻撃的になりますし、もう全然波動が違いますね。音でその人の性格が出ますから。
— 精神的なものですね。
水間 もう九割音というものは精神的なものじゃないですか?
— 九割ですか?
水間 本当に心の状態がいい時に出た音というのは、涙が出るくらい気持ちがいいですね。めったに出ないですけどね。
— 何回かしか経験がないですけど、聞いた時に涙が出る演奏というのは本当に震えるんですよね。そういう時は音楽家の力はすごいなと思います。
水間 ちょっと話がそれますけど、初めてベルリンフィルで吹いた時、涙が止まらなかったんです。後ろでラッパが鳴りまくって、こんなに素晴らしい音楽家の中で吹けて本当に幸せで幸せで吹きながら涙が出ましたね。
— それは感動ですよね、本当に。
水間 こんな経験ベルリンフィル以外では出来ないですね。
— 涙を流す演奏機会はドイツの方が日本よりも多いですか?
水間 ほとんどないですけどね(笑)。
— 日本のオーケストラはいかがですか?
水間 弦楽器はかなりいい線いっていると思うんです。だけど申し訳ないですけど、管楽器が下手です。
— 技術的な問題ですかそれは。
水間 技術的な問題もあります。
— 音楽的な問題ですか。
水間 音楽的な問題もあります。
— 音楽的な問題は、先ほど言われたように精神性ということですか?
水間 そうですね。トップの生活態度見たらおかしいですよね。警察沙汰になりかけている人がいっぱいいます。
— 人間性でしょうか?
水間 日本人の先生というのはすぐ権力をかさにきてしまう人が多いようですね。すぐ威張っちゃいますからね。厳しいのはいいと思いますが、威張るのはどうですかね。生徒にも教えてやっているじゃなくて、教えさせて頂いているという気持ちで生徒に接しないとだめだと思いますね。
— 音楽的な夢を教えていただいてよろしいですか?
指揮者水間博明
水間 オーケストラの仕事が暇だったので、30過ぎからオランダの音大の指揮科に入りまして指揮を勉強したんです。当時卒業してからかなりいろいろなオーケストラで振らせて頂きました。お金を稼ぐんだったらこのまま指揮をやっていればいいなと思ったんですけど、仕事で指揮をやるとホテル暮らしになるので家族とも離れ離れになります。それからほとんど地元以外の仕事引き受けなくなったんです。今のオーケストラからも何回も仕事いただいて指揮になってくれという話もあったんですけど、そうすると今ちょっとやりたいことが別にあるので出来ないとお断りしました。指揮の勉強をすると作曲法も勉強しないといけないんです。そうすると指揮より作曲のほうが面白いということに目覚めたんです。作曲というのは自分ですべて作れますから。何の制限も無く。
— 指揮はあくまで与えられたものの中から構築していくということですからね。
水間 だから将来の夢は自分でシンフォニーを書いて自分で振ることです。
— それはぜ見てみたいですね。
水間 今指揮は指揮でやっていて、作曲も小さいオーケストラの曲は録音しているんですけど、両方一緒にやったことはないのでそのうちにやりたいですね。それが今のところの音楽的な夢ですね。それから日本のファゴットと木管のレベルを何とかレベルアップしたいなというのが夢なんです。
— 日本のですよね。
水間 世界はほっといても何とかやっていけますけど、日本はまだ鎖国状態なんで(笑)。
— 人生的な夢ということは別にあるのですか?
水間 ちょっとありすぎて困るんですけど、静かな心でありつづけるのが一番の目標ですね。
— 禅の心ですね。
水間 本当宗教の世界ですね。音楽というのはちゃらちゃらしていることが多いですから。名誉欲とか金銭欲とか地位とかそういう雑念が出てくると本当の音楽が出来ないです。その雑念を捨てて音楽に打ち込むという人間になりたいなと思っています。
— 素晴らしい!日本の講習会ではそのような話しをして頂きたいです。ところでプロとして音楽家として活躍する秘訣、条件はあると思いますか?
水間 ドイツでやっていこうと思えばまずドイツの習慣と環境に慣れることですね。頑固な日本人気質を持っている限りドイツで生活するのは厳しいですね。
— フレキシブルな心がないと、というところですね。
水間 そうですね。常に自分を磨いてまじめに集中力を持って練習してやっていかないとドイツでは難しいですね。環境になれない人は結構何年かドイツにいても帰ってしまいますね。
— 音楽的なことではない部分ですよね。
水間 ドイツ人は個人主義ですから、日本人から見たら寂しいところがあると思うんです。演奏会が終わっても誰も飲みに行こうと言わないとか(笑)。各自ばらばらに帰っていきますから。
— それが寂しいという人もいるんですね。
水間 慣れちゃってますからね。日本人は打ち上げ行くのが楽しみで演奏会やっている人もいますから。
— 最後に、読者に何かアドバイスがあれば教えて頂いてよろしいですか?
水間 これは一言、ドイツだったらドイツ、イタリアだったらイタリアに留学される目的意識を持って来られることですね。それが一番です。それがない人が多いですから。憧れだけで留学に来るという方が多いんですよ。そういう人は遊んで終わっちゃいます。30近くになって日本に帰って無職で何をしたらいいんだろうとなってしまいます。
— ずっと見てこられた重みがありますね。
水間 本当に九割そうですよ。ウィーンに行ってびっくりしたこともありましたね。。30才過ぎのひとに「何をしておられるんですか」と聞いたら「指揮者です」というんです。「仕事は何をされておられるんですか」と言うと何もないんです。そういう方が何人もうろうろしている。ウィーンには日本人は何百人行ってますよね。でも勉強しないで遊んでいる人も多いですね。
— もったいないですね。状況とか環境は非常にいいのに。
水間 やっぱり今の人は、皆さんお金持ちなんです。だからハングリー精神が無いんですね。仕事が無くても家に帰ったら親に食わしてもらえるとかね。
— 明日仕事がなくて、どうしようという条件にはならないということですね。
水間 そうなんです。それともう一つ、相撲と同じで、人の3倍練習しないといけない上には行けないと思います。プロを目指している方は、頑張って3倍やっていただければと思います。
— 長い間、ありがとうございました。
〜〜水間博明さんのコンサート情報〜〜
トリオのコンサート情報です。
東京7月7日 ノナカ貿易 14時開演
http://www.nonaka.com/actus/doublereed/event/index.html
京都7月8日 14時開演
http://www.hpmix.com/home/trouvere/frame.htm
盛岡 7月20日
http://www.d3.dion.ne.jp/~tera2/
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