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ベルリンを拠点にソリストとして活躍中の植村理葉さん
「音楽家に聴く」というコーナーは、普段舞台の上で音楽を奏でているプロの皆さんに舞台を下りて言葉で語ってもらうコーナーです。今回はドイツ・ベルリンでヴァイオリニストとしてご活躍中の
植村理葉(ウエムラリヨ)
さんをゲストにインタビューさせていただきます。「音楽留学」をテーマにお話しを伺ってみたいと思います。
(インタビュー:2008年9月)
ー
植村理葉さんプロフィールー
バイオリニスト植村理葉さん
桐朋女子高等学校音楽科を卒業し、ケルン音楽大学でイゴール・オジム氏に師事。文化庁芸術家在外研修員(3年派遣)として研鑚を積み、最優秀成績で卒業。ローザンヌ音楽院ではピエール・アモワイヤル氏に師事、首席で卒業。多くの指揮者に認められ、ヨーロッパでのオーケストラとの協演は80回を超える。ケルン室内オーケストラ、プラハ・シンフォニエッタ、州立ハレ・フィルハーモニー管弦楽団などとも協演し、ドイツやサンクトペテルブルクの音楽祭にも数多く招かれている。また、ドイツ国内主要ホールでのコンサートツアーで演奏したシューマンの協奏曲は、ドイツ・ソニーからCDも発売されている。
全日本学生音楽コンクールヴァイオリン部門小学生の部全国1位、ミケランジェロ・アバド国際コンクール優勝、レオポルド・モーツァルト国際コンクールでは最高位に加えモーツァルト特別賞を受賞、第15回新日鉄音楽賞フレッシュ・アーティスト賞を受賞、他数多くの受賞経歴を持つ。
-はじめにこれまでの経歴を教えてください。
植村 4歳でヴァイオリンを始めて、小学校5年生のときに毎日新聞社主催の全日本学生音楽コンクールで優勝しました。高校は桐朋の音楽科に入学し、3年生のときに毎コンで2位になって、翌年、卒業後にケルンに留学してイゴール・オジム先生に師事しました。海外のミケランジェロ・アバドのコンクールで優勝、モーツァルトコンクールで最高位に入賞しました。また、第15回新日鉄音楽賞フレッシュ・アーティスト賞を受賞しました。ケルン音大も含めてケルンに6年いた後、スイスのローザンヌでピエール・アモワイヤル氏に師事し、その後、今から8年ぐらい前にベルリンに来ました。ケルン音大にいた頃から、運よくオーケストラでソリストとして招待されることが多くなり、そのほとんどが定期演奏会で80回ほどになります。
-ヴァイオリンを始めたきっかけは何ですか?
植村 母が「ヴァイオリンを弾いてみる?」って言ってくれて、私はすぐに「やる!」って・・・・。
-そうすると、お母様もヴァイオリンをされているんですか?
植村 いえ。専攻は音楽学だったんですけれど、母はヴァイオリンではなくピアノです。私の手も母と同じで小さいだろうっていうことで、将来的なことも考えてヴァイオリンを勧めてくれたようです。家にはピアノがあったので、ピアノには慣れ親しんでいたと思います。
-ご自身は子どもの頃、ヴァイオリンとピアノどちらが好きでしたか?
植村 どちらがということはあまり記憶にないですが、ヴァイオリンが単旋律なのに比べて、ピアノは一人で全部奏ける曲がほとんどなので、そういう意味でピアノもすごく好きでした。違うものとしてピアノは楽しく奏いていた気がします。
-現在でもピアノは併行して奏いてらっしゃるんですか?
植村 ピアノは、小さい頃からずっと母に習っていましたし、桐朋でもケルン音大でも副科でピアノをとっていました。ケルンにいた頃は家にピアノもありましたし。その後、ローザンヌに行ってからは、副科ではなかったんですけれども、学校のレッスン室にピアノがあったのでそれを奏いていました。卒業後は学校のレッスン室も使えない状況になり、家にもピアノをおいていなかったのでだんだん遠ざかってしまいましたが、また奏きたいですね。
-ヴァイオリンを始めた頃、将来は外国に行こうと思っていらっしゃいましたか?
植村 そうですね。はっきり覚えているのは「ヴァイオリンを始めたい?」って母に聞かれたときに、パーッと自分のイメージで思い浮かんだのが、オーケストラをバックに大きな会場でソロで奏いているっていう光景でした。
-その頃からイメージされていたんですね。
オケをバックに
植村 多分、テレビでそういう番組を見たことがあったんだと思います。それで、オーケストラをバックに奏くということしか考え付かなかったのかなと(笑)。
-それでも、いつかプロとして、と思っていたんですね。
植村 ヴァイオリンをやるということは、ソリストとしてやっていくということだ、と疑いもなく思っていましたね。
-クラシックに興味を持ったきっかけは何ですか? 身のまわりにクラシックがあったからでしょうか?
植村 そうですね。音楽といえばクラシックが普通だと思っていて。
-他のジャンルに気が移るということはなかったですか?
植村 なかったですね。あんまりしっくりこなかったといいますか・・・・、たとえば小学校に入ってクラスの人たちが歌っていたり、すごく古い話ですが、トップテンを見ていましたけど、それはそれで単なる娯楽という感じで、好んで聴くということはしなかったです。
-留学を具体的に考えたのはいつ頃ですか?
植村 少なくとも高校に入った頃には考え始めました。
-当時、留学は珍しいですよね。
植村 そうですね。今は、高校でも大学でも留学は増えていますよね。私は外国に早く出たかったし、やっぱり自分で独立して勉強したいっていう気持ちが強くありました。
-どうしてドイツを選んだんですか?
植村 実は最初はニューヨークを考えていたんです。当時はソリストといえばジュリアードで学ぶというのが主流だったんです。それでアスペン音楽祭に
高校のときに行きましたら、先生も良かったですし、なんの疑いもなくジュリアードに行こうと思っていました。
-それがどうしてドイツになったんですか?
植村 高校3年生のときに、桐朋に教えにいらしていたオジム先生のレッスンを受けたんです。それがすごく良かったんですね。確か10月か11月だったと思うんですが、そのときからジュリアードよりも、オジム先生の教えてらっしゃるドイツへの留学を急に考え始めました。
-急に変更したんですね。
植村 はい。桐朋では第二外国語を選択できたのですが、それまではドイツに行くということが全然頭になかったので、フランス語をとっていたくらいだったんです(笑)。でも、音楽を学ぶのだったらヨーロッパがいいという考え方もあることも手伝い、急遽ドイツへの留学を決めました。結局、ドイツ語も全然できない状態でドイツに発ちました。
-ドイツに行きたいというよりはオジム先生につきたくて、ドイツに決めたという感じでしょうか?
植村 そうですね。ほんとに。
-先生との出会いというのは大事なんですね。
植村 そうですね。先生というのはすごく大事だと思います。それから先生との相性も大切なことだと思います。
-学校に入ってから先生を探すより、事前に探したほうがいいと思いますか?
植村 そうですね。できれば講習会などで実際に習ってみるのが一番いいと思います。いい先生はたくさんいますが、自分との相性がいいかどうかはまた別の話だと思いますので。レッスンを実際に受けてから決めるのがいいと思います。すごく人気のある先生で、生徒もいっぱい持っていて、という状況であれば、その先生ときちんと話し合って、例えば個人レッスンを受けながら順番を待って、その間に語学準備をするのがお勧めです。
-何よりも先生が大事ということですね。
植村 もちろん外国に来てから先生とコンタクトを取った方で、いい先生にめぐり会えた方もいらっしゃると思います。またその人自身、先生も大事だけれどどうしてもそこの場所で学びたい、という他の強い目的を持っていれば、またちょっと違うかもしれないです。それでも、やっぱり先生との相性というのはとても大事だと思いますね。
-オジム先生との出会いは貴重だったんですね。
植村 そうですね。出会えてラッキーだったと思います。もし、出会っていなくて、ニューヨークに行っていたら、また違う人生だっただろうなって思いますね。具体的には想像できないですけれど……。
-ケルンに行かれる前に長期でご留学されたことはあるんですか?
植村 ないです。アスペン音楽祭に2週間か3週間行ったくらいですね。
-先ほど、ドイツ語をまったく話せない状態で留学された、という話があったんですが、不安ではありませんでしたか?
植村 オジム先生はすごく英語がお上手で、英語をどんどんしゃべる方なので、レッスンでのコミュニケーションにはあまり不安を感じませんでした。行く前の不安というよりは、行った後の大変さのほうが(笑)。
-実際に行ってみて何が大変でしたか?
植村 一人暮らしも初めてでしたし、気候も東京に比べるとずっと北のほうなので、暗くて陽が差さないんです。それに、当時は日本に比べて、お店にかわいいものや素敵なものが全然ないんですよ。たかがそんなことっていう感じですが(笑)、一人暮らしで気分転換に街に出てもすてきなものとかがなくて、探し上手な人だったら、いいものを見つけ出したりするのかもしれないですけど、パッと見てかわいいものが何もない状態だったから、気分も暗くなってしまうんです。そういう面でもとても気が滅入ってしまって……。でも、そんなときでも、すごく熱心に教えて下さった先生がいたから乗り越えられたんです。
-なるほど。
植村 もともと現地に友達がいる人は別かもしれないですけど、そういう意味でも先生は大事だなと思いました。海外生活という慣れない状況に加えて、先生との相性でも辛い思いをしてしまうのは大変だと思います。今はインターネットも普及していますし、あの頃とは比べものにならないほど、気が滅入らない環境にはなっているとは思うんですけどね。
-それで、ケルンに6年滞在されて、そのあとスイスに行かれたんですよね。スイスに行かれたのはどうしてですか?
植村 日本では高校だけ卒業して留学したので、ケルン音大では授業を全部取らなきゃいけなかったんです。それが終わって、ケルンでの学業を終える頃に、次にまたちょっと違う先生に習いたいと思ったんですね。それで講習会に参加して、3人ぐらいの先生のレッスンを受けたら、どの先生も素晴らしい方だったので、どこに行っても自分は満足だなと思っていたんですが、一番先にとんとん拍子に話がついて、気がついたら決まっていたのがローザンヌだったんです。ローザンヌの学校には2年間通いました。ケルンのソリストコースは、ローザンヌに行ってからも併行して通い、試験を受けて卒業しました。
-学校はどちらだったんですか?
植村 ローザンヌのコンセルヴァトワールです。先生はピエール・アモワイヤル、ソリストとして活躍していらっしゃる方です。
-ドイツとスイスの音楽的な違いはありましたか?
植村 違いはかなり感じました。やはりドイツは昔から作曲家がたくさん出ていますし、すごく音楽的な街だなと感じていました。スイスももちろん作曲家を出していますが、ドイツに比べると数も違いますし、歴史も違うので、音楽的にはニュートラルな印象を受けましたね。そんなに強い音楽的要素を感じることはなかったです。でも、すごくきれいなところなんですよね、ローザンヌは。自然が美しくて。
-ええ、ええ。
植村 ケルンで様式感を重点的に習った後で、先生もソリストの立場から教えてくださったということも、よかったですし、スイスの方はわりと気さくで明るい方達ばかりでしたので、人間関係にも恵まれ、楽しく過ごす事ができました。スイスにいる間は、せっかくローザンヌに来たのだし、先生の教えは貴重だ、そう思いながらやっていましたね。ただドイツに帰りたいという気持ちは変わらずに強かったので、学校が終わると、またベルリンに戻ったんです。
-そのときは、ケルンではなくてベルリンにされたんですね。
植村 ケルンに住んでいた頃にベルリンに行ったことがあり、そのときにすごく街が気に入ったんですね。そしたら縁があって、またいい先生にめぐり会って、その方がベルリンにお住まいでした。
-その後、ベルリンに8年くらいいらっしゃるんですよね。
植村 ローザンヌの学校が終わってからですから、9年ぐらいですね。
ドイツの新聞にも掲載
-ドイツでクラシックを学ぶにあたって良い点や悪い点、日本と違うところなどあるかと思いますが、そういったところを教えてください。まず、良い点はありますか?
植村 先ほどもお話したように、ドイツは作曲家もたくさん出していることもあって、音楽の大事な面というのが学べると思います。例えば、極端に言えばソリスティックに弾くという面よりも日常の生活からも音楽的なことを学ぶことのできる国だと思います。
-なるほど。
植村 オーケストラも州立や国立のオーケストラがいくつもあって、すごくいい響きですし、クラッシック音楽が、昔から歴史があって根付いているので、音楽家の立場や地位がしっかりしていると感じます。演奏を気に入って下さればソリストして使ってくれるところも良い点だと思います。
-そういったチャンスが多いということでしょうか?
植村 何がチャンスになるかは、それぞれの性格で違うと思いますが、わりと公平に見て下さり、演奏さえ気に入ってくれれば使って下さるというところがあります。何も持ってない者にとってはありがたいですね。
-他のものを持っていないとはどういうことですか?
植村 例えば、紹介がなくてもとにかく演奏を気に入ってくれればソリストとして招待してくださるということです。
-反対に悪い点はありますか?
植村 考えてみたんですけど、悪い点は分からないです。
-日本と違う点はありますか?
植村 そうですね。仕事の依頼のときにドイツだと「いくらで奏いてくれますか?」とか「いくら要求する?」ということをはっきり聞いてくるんですよね。たぶんドイツがいちばん顕著だと思うんですが、そこが一番日本と違いますね。直接的なんですけど、そういう言い方をしてくれるので、こちらも気をもんだり、心配しないで済むんです(笑)。
-まず値段だけ聞いてくるのですか?
植村 いえ(笑)。「何月何日にどこで奏くのをいくらで奏いていただけますか?」という感じです。我々にとってはすごくありがたいです。
-重要なことですよね。でも、おもしろいですね。
植村 ドイツの人というのは、ざっくばらんというか、ほんとに直接的に事務的にコミュニケーションとる人達だと思います。
-日本はそういうわけにはいかないですよね。
植村 そうですよね。そこは難しいなと思ってしまいますね。私があまり気をまわすことが得意じゃないからかもしれないですけど(笑)。
-ドイツで仕事をするにあたって日本人が有利な点はありますか?
植村 日本人だから、有利だったとか不利だったとか感じたことはないです。
-語学が堪能だからでしょうか?
植村 いえいえ、ドイツ語は全然堪能でないですよ。
-では、言葉で不便を感じたことはありませんか?
植村 最初の頃はありましたね。オジム先生は英語が得意だったとはいえ、英語でコミュニケーションとるわけです。例えば、レッスンの日にちを変更してもらうときに、どうして日にちを動かしたいのかを言葉を尽くして説明しなければいけないのに、丁寧に伝えられなかったりして、こんな時は、もっときちんと伝えられればいいのになぁ、と思うことはありましたね。
-ええ、ええ。
植村 でも、話を聞かない人だったら仕方がないのですが、話を聞いて下さる方だったら、語学が堪能でなくても誠実に伝えようという気持ちで話せば、それはそれで伝わるので、なんとかなると思います。逆にいえば、私にとっては日本語のコミュニケーションの方がすごく難しいです。もちろん日本語はネイティブですが、日本語でも苦労する面がたくさんあります。だから、そういう意味では、何語だからどうということではないように思います。英語だったから…とか、ドイツ語だったから…と感じたことはありません。すべての言語においてそれぞれ苦労するな、っていうのはありますけれども(笑)。
-それでも仕事を見つけるにあたって、言語が有利に働いたり、不利に働いたりはしませんでしたか?
植村 どうでしょうね。広くいえば語学力に含まれるのかもしれませんが、どれだけ機転をまわせるかとか、どれだけ自分の主張を言えるか、っていうところで苦労しました。でもそれは、語学力というよりもその手前の段階の問題だろうなと思うことがあります。
-なるほど。
植村 もちろん、そこをクリアした上で、語学力が足りなくてっていう段階まで来ている人であれば、語学の問題になってしまうと思うんですけどね。でも、そこまで来ていれば、必要に応じて語学もできるようになると思うんです。だから、語学は出来るに越したことはないですけれども、私自身はそれ以前にコミュニケーションの取り方とか、語学以前の問題が大きいので、その部分も大事かなと思います。
-やはりドイツでは自己主張もはっきりしていかないと難しいでしょうか?
植村 そうですね、自己主張は必要ですね。少なくとも謙遜はしない方がいいと思います。自分がしていることよりも低く言うようなことはしない方がいいですね。どうしても日本人は謙遜が染み付いているから難しいとは思いますが……。私も今でも反省することがいっぱいあるんです。
-やはり、そうなんですね。
植村 でも、逆にいえば、言葉通りのことが多いのですごくわかりやすいことは確かですね。それはスイスに行ったときに感じました。スイスはドイツに比べてもう少し社交的というか、言っていることがそのままというわけじゃないことがあるんです。社交上はそう言ったけど直接そういう意味ではなくて、他のことを意味している、ということが結構あって、スイスにいた頃は、それを身につけるのがかなり難しいなと思っていたんです。それに比べると、ドイツはすごく単純で、言っていることがそのままだし、ズバズバ言ってくれて、また、わからないことがあればはっきり質問してきます。逆にコミュニケーションがすごく取り易いですね。
-分かりやすい国民性なんですね。
植村 そうですね。
-今のお仕事を見つけたきっかけを教えてください。
植村 クラシッシェ・フィルハーモニー・ボンというオーケストラがボンにあって、ケルンにいた頃にそこでソリストとして使って下さったのが最初です。そのオーケストラは、ドイツ中の主要ホールでツアーするオーケストラだったので、大ホールでたくさん奏けて、良かったと思っています。一回ソロで弾いて、また次も指揮者が呼んで下さって、ということで繋がり、また、他のオーケストラでは客演指揮者のときに弾いて、その方が彼自身のオーケストラのところに呼んで下さったりすることもありました。そんなふうに繋がってここまできているので、とても良かったと思います。
-ソリストはオーディションで選ばれるわけではないんですね。
植村 オーディションで公募はしていないです。少なくとも私は聞いたことないですね。クラシッシェ・フィルハーモニー・ボンのオーケストラで奏いていた人達は、のちのちベルリン・フィルのオーケストラの団員になったり、他のオーケストラのコンサートマスターになったりと、素晴らしい方が多かったです。そのオーケストラをバックにたくさんの経験を積めたことがありがたいことだったと思います。
-素晴らしいご経験ですよね。日本でオーケストラと協演されたことはございますか?
植村 名古屋フィルハーモニー交響楽団の定期演奏会や、東京フィルハーモニー交響楽団とパガニーニのコンツェルト、群馬交響楽団などとも協演しました。でも、回数はドイツでのほうが圧倒的に多いです。
新聞でチャイコの批評
-日本人とドイツ人、どちらが演奏しやすいと感じますか?
植村 お互いに思っていることかもしれないですけど、日本人だとあんまり主張がみえてこないので、お互い見合っちゃうんですよね。どうしたらいいのって感じになっちゃうことがあって(笑)。ドイツのオーケストラだと、パワーがあってこういう音楽をするっていうのが伝わってくるので、そうやってくるんだったら私はこうやりかえす、みたいな感じで、相乗効果でどんどんいい音楽になっていくんです。ドイツのオーケストラですと、本場ならではの土台がしっかりあるから、そういう意味で奏きやすいです。日本のオーケストラも、なんというか・・・キメ細やかですね。外国で学んできている人が多くなってきていることもあるのか、すばらしい演奏も増えていると思います。
-やはり国民性みたいなものが音楽にも表れるのでしょうかね。
植村 そうかもしれないいですね。ただ、ちょっと不思議というか、どうしてなんだろうって考えることがあるんです。日本人はわりと和を大切にするので、みんなが一緒に弾くオーケストラが向いていて、自己主張の強いドイツ人はソリストが向いていると思うんですが、でも実際は、ドイツ人がソリストとして奏くよりもオケで奏くほうが得意、日本人はどちらかと言えば、ソロのほうが得意なような気がします。そこは矛盾しているなって、ときどき疑問に思うんですよ。
-そうですね。おもしろいですね。どうしてでしょう?
植村 もしかしたら、みんなと一緒に合わせようとする和の気持ちが強過ぎると、音楽的な自己主張が引っ込んでしまって、結果としてはオケの「響きあう」ということに繋がらないのかなとも思います。
-今後もソリストとしてオーケストラと協演していく予定ですか?
植村 そうですね。今後とも日本でも海外でもソリストとして活動する演奏家であり続けたいです。
-他に今後されたいことは何かありますか?
植村 去年まで3年間、毎日新聞社の学生音楽コンクールで審査員をしていたんですけれど、小学生、中学生、高校生の演奏を聴いて、私がこれまで学んできたことを伝える、ということもしていきたいと思いました。日本で演奏会があるときなどは日本におりますので、そのときは直接教えて、いないときはアシスタントに見てもらうといった形をとっていけないか、考えています。
-音楽的な夢はありますか?
植村 真剣に取り組めて、時間も十分作れて、音楽的に相性のいい人達が集まれたら、ベートーヴェンのカルテットの全曲演奏をしたいというのが夢です。ベートーヴェンのヴァイオリンとピアノのためのソナタは10曲あるんですけれど、その10曲全てを演奏するツィクルスを三周したんですよ。それで今度11月に朝日カルチャーセンターでまた一番から奏くのですが、何回奏いてもベートーヴェンのソナタは奏き足らないというか、魅力が尽きなくて……。あるとき、結局これはカルテットにつながっていくものなんだなと思ったんです。ただ、カルテットはメンバーの音楽的相性がとても重要で、合わせの時間もたくさん必要なので、4人とも共通した時間がやりくりできて、4人とも集まりやすい場所にいるかということが大事なので、すごく難しいと思うんです。でも、いつか実現できればすごいことだと思います。
-実現できるといいですね。
植村 はい、本当に「夢」ですね。
-植村さんにとって、音楽とはいったい何ですか?
植村 それを一言で申し上げるのはとても難しいのですけれども、私が演奏会で心がけていることは、作曲家のなかで何が鳴っていたか、何が言いたかったかを伝えるということです。そして音楽が一番生きる演奏をするのが理想だと思っていて、そうすることによってコンサートで聴衆の皆様に伝わるようにと思っています。演奏会のときはいつも作曲家が感じた世界や考えた世界を生きた形でお客さんと共有したいと思っています。
-なるほど。
植村 それから、音楽以外のことをやっている仲の良い友人が何人かいるんですが、その人たちの話を聞いていると、どんな分野でも突き詰めていくと、共通している事が多いと感じます。私はそれを音楽で表現するわけですが、他の分野の人は、表現する方法が違う。もしかしたら、私がしている音楽というのは、表現手段としては比較的表現がしやすいものなのかもしれないとも思います。ただ、表現の仕方が物質みたいな形にはならないので、うやむやにもなりやすいですし、形にならない分、必要ないって思われたり、予算がなければカットされちゃったりする部分でもあるかもしれません。でもだからこそ逆に、専門的とか精通しているとかとは別に、純粋に音楽が好きな人には良い音楽は必要とされているんだなと思ったりもします。私は人前で奏いたりとか、音楽をすることによって自分やまわりのことを考えたりとか、経験を積んだり、また音楽を通していろんな人と知り合い、影響しあっています。つまり、音楽によって、いろいろ精進しています。だから、私にとって、音楽というのは「私の人生の中に入り込んでいること」です。
-素敵なお言葉をありがとうございます。
植村 いえいえ。
-最後にプロを目指している方に、プロで成功する秘訣やアドバイスがあればお願いします。
植村 ドイツでプロとしてやっていくためには、謙遜しないことが大事だと思います。それから留学するにあたっては、相性がいい先生に教わることだと思います。
-いい先生と出会うことは非常に大事なんですね。
植村 はい。私自身、出会いに恵まれてきたことでここまで来れていると思います。先生がいい音楽家であっても、性格的に合わないといったことで苦労してしまうのはもったいないです。苦労しなくていいところで苦労している人を周りでわりと見てきていますので、そういう面で、私はラッキーだったと思っています。
-なるほど。今日は貴重なお話をありがとうございました。
植村 どういたしまして。
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植村理葉さんによる朝日カルチャセンターレクチャー
ベートーヴェンのヴァイオリンとピアノのためのソナタの魅力を分かち合いたくて、ドイツでソリストとして活躍中の植村理葉が皆様をお誘いいたします。至近距離での演奏をご堪能ください。
日時:2008年11月8日午後1時
場所:新宿住友ビル7階朝日カルチャーセンター
演奏曲目:ベートーヴェン ピアノとヴァイオリンのためのソナタ第1番、第2番、第3番
詳細リンク:
http://www.asahiculture-shinjuku.com/LES/detail.asp?CNO=30602&userflg=0
詳細は:http://www.riyo-uemura.com
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