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行本康子さん(チェロ/ウィーン国際音楽ゼミナール)
音楽留学体験者でなくては分からないような、音楽大学、音楽専門学校、音楽教室のコースプログラム、夏期講習会、現地の生活情報などを伺ってみます。将来の自分の参考として活用してください。
行本康子さん
行本康子さんプロフィール
4歳よりピアノを始め、14歳のときにチェロに転向。桐朋学園大学音楽学部チェロ科に在籍中。現在、4年生。2008年ウィーン国際音楽ゼミナール参加。
- まず、簡単な自己紹介をお願いします。
行本 4歳の頃から10年くらいピアノを弾いていたのですが、少し嫌いになって辞めようと思っていたところに、たまたま小さな発表会を聴く機会があって、チェロの有名な曲「白鳥」を聴いて、チェロをやりたいと思ったんです。それで、14歳からチェロを始めて、桐朋学園大学に進学しました。現在、4年生です。
- これまで講習会に参加されたことはありますか?
行本 国内のでしたら、ついていた先生の個人的なものやその先生が講師としてよばれているものに2、3回参加したことがあります。
- では海外の講習会は初めてですか?
行本 はい、そうです。海外に行くこと自体、今回が初めてでした。
- では、どうしてこの講習会に参加されようと思ったのですか?
行本 去年くらいから、ドイツ語圏で知っている先生で、という条件で講習会を探していたのですが、去年は知っている先生がいなかったので参加しませんでした。今回はたまたま日本で2回見てもらったことのあるステファン先生の名前があったので、参加を決めました。
- なるほど。先生はステファン・クロプフィッチュ先生ですよね。前に教わったときからいい印象を持たれていたんですか?
行本 とても上手で、人柄がいいんです。教えることに専念している方ではないのですが、演奏する上で大切なことを細かく教えてくださる先生です。
ウィーンのホイリゲ
- 講習会の参加者は何名くらいでしたか?
行本 全部で40人くらいだったと思います。チェロは4人でした。日本人が私の他にもう1人。韓国の中学生くらいの子、あとは、ドイツ語を話していたのでオーストリアの子だと思いますが、会場になっているウィーンの音大を受けたいと考えている子でした。
- 他の生徒さんの演奏を聴く機会はありましたか?
行本 韓国の子の演奏は聴けなかったのですが、あとの2人の演奏は聴きました。日本人の子はレッスンが前後だったので、必ず聴講していました。
- レッスンの雰囲気はいかがでしたか?
行本 多分、先生に見てもらうのが初めてであれば、どんな感じかな、と様子を見るののだとと思うのですが、私の場合、日本でも見てもらっていて先生も覚えてくださっていたので、初めからけっこう本格的なレッスンが始まりました。以前見ていただいたのは4、5年前なので私も変わっているとは思うんですが、年齢などを考慮して、真剣に見てくださったと思います。
- レッスンで印象に残っていることはありますか?
行本 一番ためになったなと思うのは、力の抜き方です。日本でも「力を抜きなさい」というのはよく言われることなんですが、具体的にどうしたらいいのかは教えてくれないので困っていたんです。ステファン先生は逆に「力を抜きなさい」という言葉は一言も言わずに、「こうしなさい」というのを2、3個具体的に言ってくれたんです。あとから考えると、その弾き方が結果的に力が抜けるのではないか、と思いました。
- 他には何かありましたか?
行本 レッスン中も弾きながら「ここはああしてこうして」と指示があるのですが、必ずレッスンの最後に「今日のレッスンで1番大切なことはね……」とその日の重要なポイントを1つか2つにまとめてお話をしてくださるんです。私のその日の様子を先生が絞って見てくださる形だったので、それがすごくよかったと思います。
- なるほど。
行本 今回、コンクールの課題曲に入っていることもあり、シューベルトを持っていったのですが、ウィーンの作曲家の曲で先生もウィーンの方なので「ウィーンの古典派はこう弾くんだよ」と他の曲よりも大切に見てくださった気がします。
- 何か参考になる具体的な言葉はありましたか?
行本 ホイリゲとよばれるバイオリンなどの演奏を聴きながらワインが飲める酒場に行って、陽気な人を見て来てごらんと言われました。曲の感じを掴むのに見て来た方がいいよ、と。実際に足を運んでみると、みなさん本当に楽しそうで、「あ、こういうことなんだ」というのが少し分かった気がしました。日本人の観光客ということで、向こうから話しかけてくれたり、“上を向いて歩こう”や童謡を歌いながら演奏してくれました。
- いい体験ですね。実際に演奏は変わりましたか?
行本 自分の中では変化はよく分からなかったのですが、参加者コンサートで演奏したときに、講師としてよばれていた日本人の先生が「ステファン先生の感じがすごく出ていて、よかったですよ」と言ってくださいました。ステファン先生のレッスンを受けて変わったのかなと思いました。
シェーンブルン宮殿でオペラを聴いて
- レッスンのスケジュールを教えてください。
行本 月曜と木曜に先生に見ていただいて、月木月木でレッスンは計4回ありました。レッスンとレッスンの間に2、3日空くので、ちょうどよいペースでした。
- レッスンは1時間ですか?
行本 はい、ちょうど1時間です。
- 物足りなさは感じませんでしたか?
行本 感じませんでした。2週間あって、その中で4回のレッスンがあったので、私は十分かなと思いました。
- 講習会で組まれていたスケジュールについてお話を聞かせてください。
行本 初日に小さいホールのようなところでオープニングイベントがありました。まず、参加者の子たち3、4人のコンサートがあって、そのあと、講習会の大まかな説明を受けました。あとは最後に、サンドイッチと飲み物程度の軽いパーティーがありました。
- 他には全体で何かありましたか?
行本 13日(講習会3日目)には先生たちのコンサートがありました。先生たちの中からピアノ2人とビオラ、チェロの4人の先生が演奏してくださいました。チェロのステファン先生は1番最後にチャイコフスキーの「ロココ風の主題による変奏曲」を演奏をされたのですが、すごく評判がよくて、聴いていた他の楽器の受講生たちもステファン先生に教わりたい、と話していました。
- 13日だと、レッスンを1度受けたあとですよね?
行本 はい。11日初日に最初のレッスンがあったので。
- そうすると、これからのステファン先生のレッスンが楽しみになったのではないですか?
行本 そうですね(笑)。
- 他にもコンサートはありましたか?
行本 はい。会場が変更になって、ハイドン生誕の家ではなくて、隣ににシューベルト記念館がある小さなお城で開かれました。私はここで弾かせていただいたのですが、この会場はオープニングイベントのホールよりも学校よりも響いたので、音の響きはこの講習会中で1番よかったと思います。
- 日本だとなかなかないシチュエーションですよね。ウィーンのお城で演奏するというのは、どんな気分でしたか?
行本 すごくよかったです。他の受講生のみんなからも、私も弾くならここで弾きたいと羨ましがられました(笑)。
- お城でのコンサートでは何人が演奏したんですか?
行本 12人くらいです。
- 何曲演奏されたんですか?
行本 1人1曲で、私は先生と相談して演奏する曲を決めました。
- コンペティションも予定に組まれていたと思いますが、参加されましたか?
行本 いいえ、参加することはできませんでした。参加した人たちは、2曲を抜粋で演奏していました。そんなに堅苦しい雰囲気ではなくって、参加者コンサートとあまり変わらない雰囲気でした。
- そのあと、そのコンペティションで選ばれた人で受賞者コンサートがあったんですよね?
行本 そうです。コンペティションを12人くらいが受けて、10人が受賞していました。黒いパンツで弾いていた人がドレスで演奏していたりと、少しだけ雰囲気が変わっていました。
- その受賞者コンサートが講習会中、最後のイベントですか?
行本 はい、そうです。
- 練習はどこでしていましたか?
行本 ホテルで朝の9時〜夜の8時くらいまで音を出すことができたので、ホテルで練習しました。けっこう弾く時間はありましたね。
- 他の人の音は聞こえてきませんでしたか?
行本 窓を閉めて弾くというのが決まりだったんですが、おそらく窓を開けて弾いていた人の音は聞こえてくることもありました。ただ、私はそんなに気になりませんでした。
- レッスン以外の時間は何をしていましたか?
行本 外に出て、街を観光していました。
- ウィーンの街はいかがでしたか?
行本 すべてのものが大きいなぁというのが第一印象です。ガイドブックに載っているところやシェーンブルン宮殿、マリア・テレジア広場などに行きました。
- どこかお勧めのところはありますか?
行本 ホテルの近くにあったベルベデーレ宮殿です。私が滞在していたときは、中でクリムトの絵画展をしていました。次はゴッホ展になるようです。そこは楽しくて何時間でもいられる感じでした。
- 入場料はいくらくらいだったんですか?
行本 私は国際学生証を持っていなかったので、8〜9ユーロくらいでした。
- 宿泊先のホテルはどんなところでしたか?
行本 私は一人部屋を希望しました。部屋自体に不都合はなく、ドライヤーを借りたりすることもできて、そんなに困ることはありませんでした。日本のホテルより広かったです。
- 何か日本から持っていったほうがよいものはありましたか?
行本 歯ブラシは準備されていなかったので、持っていったほうがよいと思います。シャンプーやリンス、石けんも自分のものを使いたい人は準備しておくとよいと思います。
- ホテルのスタッフの対応はいかがでしたか?
行本 けっこうよかったと思います。行きたいところを伝えると、電車の時間を調べてくれたりしました。
- 他の参加者の方も同じホテルですか?
行本 はい。ほとんどの方が同じところに泊まっていました。レッスン時間などはバラバラでしたが、キッチンが共同なので、そこで会って話すのが楽しみでした。最初は外食をしていたのですが、毎日だと高くつくので、途中から自炊するようにしていました。
- 自炊していたんですね。食材はどうしていましたか?
行本 ホテルからすぐ近くのところにスーパーがあったので、そこで購入していました。
- 外食はいくらくらいだったんですか?
行本 中華料理など安いところは、5ユーロくらいでした。日本から来ている他の方と、ホテルの近くのレストランで食事をするときはだいたい8ユーロくらいでした。スープとメインとデザートが出て来る感じで、お腹はいっぱいになりました。高いといえば高いけど、こんなもんかな、という感じもしました。
- 参加者はどこの国の方が多かったですか?
行本 7割くらいが日本人でした。あとは、イタリア、韓国、ノルウェー人でした。
- 海外の方とうまく付き合うコツはありますか?
行本 日本人以外の参加者の方は、日本人が集団でいたので入りづらかったのか、特別な用事でもない限り、向こうから話しかけてくることはなかったです。なので、こちらから話しかけることのほうが多かったですね。話してみると、片言の適当な英語でもわかってくれたし、向こうもこちらがわかりやすいようにゆっくり話してくれたりと親切にしてくれました。
- 滞在中、何か困ったことはありましたか?
行本 困るという程でもありませんが、ホテルの朝ご飯が毎日一緒だったのが……(笑)。バイキングの内容が種類が少ないのにまったく同じだったんです。1週間くらいなら問題ないと思うのですが、2週間〜それ以上となると、少しきつかったです。パンが2種類とハムが2種類、チーズが2種類、スイカ、トマト、あとは飲み物が牛乳、ジュース、コーヒー、紅茶といった内容でした。
- ウィーンの交通はどうでしたか?
行本 電車に乗ってしまえばどこにでも行ける感じでした。日本のようにメトロの路線の数も多くないので、迷うこともありませんでした。チケットは乗り放題のものを購入しました。
- ウィーンの街は過ごしやすかったですか?
行本 日本と外国の違いだと思いますが、よく話しかけてくれました。お店の方だけでなく、そこに買い物に来ている現地のお客さんに話しかけられることもありました。ウサギの絵はがきをみていたら、そこにいた現地のお客さんが、その絵はがきと私の顔を見比べて「似てるわ」とおもしろおかしくいってきたり……。そういうことは日本ではないなぁ、と感じました。あとは、日本人で英語が話せる人というのは少ないと思いますが、ウィーンではほとんどの方がドイツ語以外に英語でも話してくれるので、助かりました。
- 初めての方でも行きやすい街ですね。
行本 はい。私が行けたくらいなんで……(笑)。
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- 今回、留学をして成長したなと感じるところはありますか?
行本 周りの参加者を観察していて、やはり積極的な人が何かを掴めるのかな、ということがなんとなくわかりました。私も最初の1週間は様子を見ているところがあったのですが、後半は日本人はもちろん外国人にも話しかけてみようかなと思い、積極的にしていました。
- 講習会に参加してよかったなと思えることはありましたか?
行本 17日(講習会7日目)の参加者コンサートでお城で演奏したときに、イタリア人のクラリネットの男の子が私のチェロを気に入ってくれて、直前のピアノ合わせのときから「いいよ、いいよ」と言ってくれて、演奏が終わったあとも拍手で迎えてくれました。それで「室内楽をやらないか?」と彼が誘ってくれたんです。結局予定が合わなくて、合わせは出来ずに終わってしまったのですが、それでもそういうふうに言ってくれたことがすごくうれしかったです。日本に帰った後、彼とはメールをしています。
- 他に何かよい経験はできましたか?
行本 直接、講習会とは関係ないのですが、行きの飛行機で隣に座った女の人が乗り換えを手伝ってくれたり、帰りの飛行機でもスチュワーデスさんとチェロ分の座席のチケットのことで話が通じていないときに、日本人の女の人が間に入って通訳をしてくれて助けてくれました。最後のアムステルダムから成田の飛行機でも隣に座った男性が「趣味でコントラバスを弾くんですよー」と話しかけてくれました。その方は名刺もくださって「演奏会があるときは連絡してください」と言ってくれました。飛行機でもいろんな出会いがあって、楽しかったです(笑)。
- 楽器を持っていると話しかけやすいのかもしれないですね。
行本 それはそうかもしれないですね。そういえば、もう1人いた日本人のチェロの子は、楽器を現地で借りて、弓だけを持って来たと言っていました。その借りた楽器がすごくよい楽器で彼女にあっていて、気に入ってるみたいだったので、製作の年代や名前をメモさせました(笑)。
- 行本さんの楽器は向こうで音の鳴り具合はかわりましたか?
行本 日本に比べて向こうはよく乾燥しているから音の響きがよくなるということを聞いたりしますが、私の楽器はしけてるから響かないということはなくって、そんなに変わらないんじゃないかなと思いました。ただ、日本のほうが湿気は多いので、向こうに行って鳴らなくなるということはないと思います。
- 他に留学をして感じたことは何かありますか?
行本 やはり語学が大事だなと思いました。話したいという気持ちさえあればなんとかなるとは思うんですが、いろいろな言葉を知っていたほうが伝わりやすいかなと思いました。
- そうすると、留学する人へのアドバイスも「語学の勉強をしたほうがいい」ということになりますか?
行本 そうですね。ただ、そんなに前もって勉強していなくても、どんどん話しかけることが大事だと思います。あとアドバイスとしては、先生の選び方も大事だと思います。私は知っている先生に教わったので、レッスンが始まってからギャップを感じることはなかったのですが、感じてしまう人もいるようです。知っている先生に教わるのがベストですが、知らない先生でも少しでもいいので情報をキャッチしてから行ったほうが、向こうに行ってから驚いてしまうということもないと思います。
- 今後の活動の予定を教えてください。
行本 具体的にこれをというものはないんですが、卒業後はこの夏の経験を活かして何でも挑戦してみようと思うようになりました。今までは、表舞台に出ることを望んでいたのですが、そうではなくても、どこでも何でもいいから演奏が楽しくできれば、幸せなのかなと思うようになりました。だから、どんなに小さな仕事でも頼まれたら必ず演奏しようと思うようになりました。
- それはやはりウィーンで何か影響を受けたんですか?
行本 そうですね。外国の方は日本人とは違ってだいぶ楽しそうに弾いているし、街の人も楽器を持っていると興味を持ってくれたり、自然に音楽が流れている雰囲気が街にありました。
- これからも音楽を楽しんでいけるといいですね。今日は本当にありがとうございました。
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