アンドリュース瑚彩さん/青少年のためのシュリッツピアノ夏期講習会 ピアノと語学レッスンコース

アンドリュース瑚彩さん/青少年のためのシュリッツピアノ夏期講習会 ピアノと語学レッスンコース
6歳よりピアノを始める。
ジュニアオーケストラのチェコ公演、ルーマニア公演、フィリピン公演でラフマニノフやグリーグのピアノ協奏曲のソリストを務める。
14歳からヴァイオリン、ヴィオラを始め、中学・高校と弦楽部に在籍。現在コンサートミストレスを務める。
-まず、簡単な自己紹介、今までの略歴を教えていただけますか?

瑚彩様:ピアノは6歳頃から始めました。弦楽器を14歳頃から、ヴァイオリンとヴィオラを新たに始めて。ピアノは習っている先生の主催する発表会で毎年コンサートをやっていたりしていました。コンクールに出たことはありません。
-弦楽器もされてたんですね。

瑚彩様:そうですね。クラシック音楽が好きで、弦楽器の音色にも惹かれて。ヴァイオリンもかっこいいな、と思って始めました。それと、友人がジュニアオーケストラのメンバーだったので、体験しに行ったら、その先生にヴィオラを勧められて。始めてみたらはまってしまったという。
-いろいろ多才なんですね。

瑚彩様:ありがとうございます。いろいろ手を出してしまっていますけれど。
-今回ピアノの講習会だったと思うんですけど、ほかにも何か講習会に参加されたご経験はあるんですか?

瑚彩様:海外へはないんですけど、音大の受験講習会があって、レッスンと楽典・聴音を、数回受けたことがあります。
-ドイツの講習会に行きたいと思ったきっかけって何ですか?

瑚彩様:ヨーロッパってやっぱり日本と違って、音楽が身近にあると思うんです。それと、ジュニアオーケストラの旅行で数回ドイツやオーストリアに行ったことがあったんですね。その時の街並みとか雰囲気がすごい好きで。音楽が身近にあることと、違った場所、違った言語に触れるきっかけになると思って。海外の先生のレッスンから、英語とドイツ語しか通じない場所に身を置いて、生きた音楽を学びたいなと思いました。
-ジュニアオーケストラで行かれたのは、旅行ということは、演奏はなかったんですか?

瑚彩様:演奏旅行みたいな感じでした。例えば1週間行ったら最後の3日練習と本番みたいな、そんなにがつがつした感じじゃなかったんですけど。観光して、現地のアマチュアのオケの人と合流して、練習して、本番という流れですね。あまり練習する時間がなかったので、ソロの曲を弾いた時にはとても大変でした。
-今回参加されたドイツのシュリッツの講習会なんですが、どれぐらいの方が参加されていましたか?

瑚彩様:ジュニアとシニアで分かれていて、13歳から17歳だったジュニアは16人、19歳から30歳までのシニアは22人でした。年齢は今回の講習のメンバーです。お互いに触れ合う機会は、そうですね、語学レッスンくらいしかなかったです。講習会の最初にオープニングセレモニーがあったんですけど、飛行機の便の関係で、私ともう1人参加した日本人の男の子が出られなかったんです。だからメンバーも後から把握するみたいな感じになりました。ただ私はルームメイトとその友達とでずっと一緒にいたので、あまりほかのメンバーと話す機会もなかったですね。それが少し残念でしたが、Facebookで友達にはなれました。
-講習会はどんなスケジュールで組まれていましたか?

瑚彩様:私は毎日朝の9時から10時半まで、申し込んだドイツ語のレッスンを受けました。そしてピアノの練習が毎日3時間取られていました。日によって時間や部屋は変わっていましたね。レッスンは、2人の先生のレッスンを二回ずつ受けられる、計4回ありました。食事は泊まっていたゲストハウス、寮みたいなところの食堂でとりました。朝は割と自由で、パンやハム、チーズなどが並んでいて、好きなものを取って食べていました。寝坊とかすると、スーパーで買ってきたシリアルバーを無理矢理食べて練習に行くみたいな。朝食、昼食、夕食とあって、レッスンがなければあとは自由、といった感じでしたね。散歩に行ったり、スーパーやパン屋に行ったり。ちなみにレッスンは、マスタークラスって書いてあったので、すごくびびっていたんですけど、実際誰も来ませんでした。他の子に聞いても、マスタークラスは全然人いないよ、って。マスタークラスもいい経験になりますが、今回周りの子の迫力がすごくて、少し自信がなかったので、安心してしまいましたね…。
-先生はどんな方でしたか?

瑚彩様:最初にレッスンを受けたニーデルドルファー先生(女性)は、英語が母国語ではないようでしたが、英単語とか表情、仕草で何となく伝わってくることもありました。割と感情的なことを大事にしてらしてたかなと。もっとこういうイメージで、ということを動きをつけて説明してくださって、とても分かりやすかったです。温和な方でしたね。もう一人のフォン先生(男性)はイギリスのパーセルスクールで教えてらっしゃる先生でした。ベートーベンのソナタをレッスンしていただいた時に注意されたのは、リズムや弾き方についてが中心でした。基礎的なことを結構言われて、自分はまだまだだなと実感しました。音楽的な指示ももちろん英語で出されて、分からない単語とかが結構出てきたりしたので少し焦りました。通訳はつけなかったんです。完璧に理解し切れない部分もあったので、先生の弾き方や音に注意したり、いろいろ聞きながらじゃないと分からないところもあったんですけど、優しく教えてくれました。ユーモアのある方でしたね。2人とも優しくていい先生でした。
-日本での教え方、今されているレッスンとの違い、外国の先生ならではの、こういう教え方って外国なんだな、と感じたことはありましたか?

瑚彩様:そうですね…。ニーデルドルファー先生は、勝手な偏見かもしれないですけど、日本人より、音で何かを表現する時、感情を表に出す感じだったかなと思います。控えめに言うことはなかったかと。できていないことは、しっかり分かるまで指導してくださいました。そうする先生も日本にはもちろんいらっしゃるとは思うんですけど。ここは感情的に、ここはこうやりましょう、みたいな、そういう表現の説明の仕方が大きかったのかなと。うまく説明できていない気もしますが。
-それはわかりやすかったですか。

瑚彩様:わかりやすいですね。言葉でいろいろと言われるより、的確にイメージさせる要素に触れたほうが。彼女は自分のイメージを提示してくださって、それを私が自分なりにイメージして、弾いていました。そういうのって個人によってイメージすることも捉え方も違いますしね。…難しいですね、音楽を言葉で説明するのは。
-スタッフの方はどんな方でしたか?例えば講習会で運営スタッフ、先生以外の方ですね。あまり話す機会はなかったですか?

瑚彩様:最初に飛行機の関係で遅く着いた時に、もう一人の日本人の男の子がいたんですけど、彼と一緒に建物を簡単に案内されたんです。そのコーディネーターというのかな、彼女が英語で説明してくださったんですね。でも彼があまり英語がしゃべれなかったので、私が通訳になるといういい経験もできて。みんな笑顔が素敵で感じのいい人ばかりでした。でもいけないことはきちんとダメと言っていました。いろんな人を見ていて思ったんですけど、日本人の遠慮というか、オブラートに包む感じが、いい意味でないのかなと。何事もスパッと言う感じでした。だから分かりやすかったですね。事務の方や掃除の方とはあまり話す機会がなかったですが、洗濯やコンサートについて聞きたいことがあるときは、お世話になりました。
-スタッフは何人ぐらいいらっしゃいましたか?

瑚彩様:スタッフは、主に関わったのはコーディネーターの2人でした。中心となる先生もレッスンを担当しながらカメラでみんなの写真撮ったりとかしていて。他は洗濯物の受付にいた方が2人と、事務室に4人くらいいらっしゃいました。私が見たのはそのくらいです。
-参加されていた方は、先ほど日本人の男の子が1人いたとおっしゃっていましたけど、他にはどういった国から来ている方でしたか?

瑚彩様:国で見ると、日本人が一番多かったのがちょっと意外でしたね。日本人がいないと思っていたら、私を含めて3人いました。でも本当に多国籍で、ドイツ、ウクライナ、トルコ、シンガポール、イギリス、アメリカ、スペインなど様々でした。みんなほとんど当たり前みたいに英語を話していて。あとはドイツ語を話せる人も結構いました。シニアのほうだと韓国、中国、日本といったアジア系と、オーストリアやイタリア、デンマークなどヨーロッパ系まで様々でした。国際色豊かなメンバーでしたね。
-皆さんの演奏はどうでしたか?生徒の皆さんがお互いの演奏を聴く機会もありましたか。

瑚彩様:そうですね、演奏会で。全員が一回コンサートで10分〜15分程度の曲を演奏しました。1人15分〜20分のプログラムを構成するファイナルには、4人が進出できるという仕組みでした。コンサートは演奏する場所までバスで行って、全員が聴きました。毎回コンサートの場所が違ったのもおもしろいなと思いましたね。印象に残ったのは、みんなすごい曲を弾いているなということです。プロコフィエフとかリストとか、指をたくさん使う曲というか、すごく技巧が多い曲を皆さん弾いてらして。やっぱりこういうところに来る人はすごいの弾くんだな、と思いました。でも、これを言っていいのかよくわからないですけど…聴いていたときに、すごい曲を自分のものにしているというか、そういう風に聴こえる人っていうのが、私の観点だと、少なかったのかなって思いました。上手に弾いてるけれど心に響いてこないな、といった感じです。そして、心に響いてくる、この人の演奏好きだな、この人ファイナルに行くな、って私が思った3人が実際ファイナルに行ったんですよ。だから、自分の音を持っているんだろうなと。自分をそのピアノで表現している人は、やっぱり技巧だけじゃないなぁ、と思って。雰囲気とか、オーラがあるんだと思います。生意気なこと言って、自分はどういう演奏をしていたのかはお客さんとして聴いていないのでわからないんですけれど…。すごい子はテクニックもすごいけど、ちゃんと心に入ってくる演奏をしていた、ということに感動しました。私もそんな風に人を感動させる演奏をしたいです。
-練習はどこでされてましたか?

瑚彩様:練習は、何台ものピアノがそのアカデミーにあって。Steingraeber & Söhne のピアノでした。練習室がたくさんあって、あなたは何時から何時まで練習、っていうのがスケジュールでちゃんと決められていました。どの部屋にもアップライトピアノかグランドピアノが一台あって、レッスン前はグランドピアノの部屋で練習できた時もありました。グランドピアノの部屋が、レッスンをする部屋も含めると計5部屋、あとはアップライトが計11部屋。全部で16台そのアカデミーにピアノがあることになりますね。練習時間になったらスケジュールに書いてある部屋に行くんですけど、自分の時間になっても中から音が聴こえるときがほとんどで。この部屋使っていいのかな?って許可とりたくなるじゃないですか。ノックして、誰もいなかったらこの部屋で練習しようみたいな、そんな自由な感じに使われていましたね。その時どうしようって最初思っていたんですけど、普通にノックして、私の時間なのでって言うと、ああそうなのね、すみません、みたいな感じのくだりができて。日本ではなかなか見られない光景かもしれないなと思いました。
-みんな時間になったら出る、という感じではないんですね。

瑚彩様:私にはそれが普通だったので最初は驚きましたね。人がいなくてすんなり入れる時もあったんですけど、いろんな部屋から常に音が聴こえるという感じでした。あとは朝から晩まで、ずっとピアノの音が聴こえていました。ジュニアとシニアはスケジュールは違いますが、同じアカデミーで練習するんですね。友達曰くシニアの方も長い間練習していたみたいで、夜に閉館するまで弾いていた人もいました。
-レッスン以外のときは皆さんでどこか行ったりとかしていたんですか?

瑚彩様:友達とスーパーに行くとか、アイスを食べに行くとかですかね。特に出かける予定のないときは、ルームメイトの子がスマホでドラマを見ているのが多くて。その子とそれを一緒に見たりした時もあったんですけど、一人でスマホをチェックしたり音楽を聞いたり、疲れていたら寝るとか、割と自由にしていました。でも大抵、談話室みたいなところで友達と集まっておしゃべりしたり、truth or dareというゲームをして盛り上がっていました。truth or dareというのは、私達が遊んだのは日本でいう21ゲームと王様ゲームを足したような感じですかね。色々遊び方があるとは思うんですけど、数を順番に言っていって最終的に21を言った人が、みんなに質問された答えを言うか命令されたことをやる、という。ほとんどそれではしゃいでいました。色々な質問や答えが飛び交って、彼らを知る機会にもなるし、面白かったですね。
-気候は暑かったですか?

瑚彩様:ちょうどいいとしか言いようのない、爽やかな風があって気持ちよかったです。日本の夏だとと湿度があって結構過ごしにくい夜があると思うんですけど、着いた時の夜はそんなの一切なくて。ちょっと肌寒いけれど、心地よい気温だったんです。暑い日もあったんですけど、39度とか40度とかそんなふうには上がらなくて。本当に過ごしやすい日ばかりでした。だからみんな半袖とかで過ごしてましたね。夜とかは暑かったときもあったんですけど、窓を開ければしのげる暑さで。講習会の最後では、楽しい思い出以外にも、この気候から帰りたくないっていう思いでした。
-外に出られたとき、治安とか大丈夫でしたか?安全面で不安はあまりなかったでしたか?

瑚彩様:オケの旅行で行ったところは、スリに気をつけてと言われることが多かったんです。肩掛けバッグの中のお財布は知らないうちに盗られるからって言われました。腰の前にポーチをつけて、ちゃんとチャックも閉めてたのに、財布とクレジットカードを盗まれたという方もいたと聞いて。私は幸い被害に遭いませんでしたが、そういう印象も結構あって。あとは物乞いする子どもがいるところもありました。しかし今回行ったシュリッツは、全然そんなことなかったです。スリにも遭わず、不審者にも会わず。田舎の方だったこともあるんでしょうけど、平和でした。ちなみにアカデミーやゲストハウスに入るには4桁の番号を押してドアのロックが解除されるという仕組みになっていたので、安全でした。
-外に出られるときは基本1人じゃなくてお友達と一緒に、という感じですかね?

瑚彩様:そうですね。友達といったほうがお話もできて楽しいので。大体一緒にいた友達とスーパーに行っていました。ただ私がスーパーに頻繁に行ったのは、飲み物が炭酸のものばかりだったからなんですよ。自販機にあったのが、水、リンゴサイダー、レモンサイダーとコーラとか。やっと水に出会える!と思ってお金を入れたら、ぬるい炭酸水の瓶だったという。蓋を開けたとたんに泡が出てきてこぼしてしまうというエピソードが誕生しました。私はいつもお茶やガス抜きの水が普通で、あまり炭酸水が好きではないので、これは困ったと思って。だからスーパーに行って、最初は0.5L入りのVolvic 6本入りを買っていったんですけど、飲むものがそれしかなかったので2日で飲み干してしまって、0.75Lに量を増やして。結構な頻度で買い出しに行っていました。もうスーパーに行く理由は基本的に水の調達、といった感じで。歩いても行ける距離だったのが助かりました。水と、あとは朝食が間に合わなかったとき用のバーとか、お菓子とかでした。お茶はやはり恋しくなりました。
-歩いてどれぐらいで行けるところなんですか?

瑚彩様:10分くらいだったと思います。
-割と近い所にある感じなんですね。

瑚彩様:そうですね。いい散歩、ぐらいだと思います。それとスーパー以外にもアイスクリーム屋さんが数軒あって、スーパーの帰りに寄ったり、アイスクリームが食べたくなったら1ユーロで買って食べていました。
-宿泊はどういったところに泊まっていたんですか?

瑚彩様:講習を受けたアカデミーと同じ敷地内にゲストハウスがあって。歩いてすぐのところに。
-アパートみたいな?

瑚彩様:いや、寮みたいな感じですかね。私は二人でルームシェアだったので、ベッドが二つあって、洗面所がひとつありました。クローゼット、トイレ、洗面台、シャワーが共用でありました。ユニットバスではなくて、立ってシャワーする感じです。部屋に入っても何もないことは言われていたんですけど、まさかハンドソープまでないとは思わなくて。迂闊でした。タオルがあるだけで。幸いそのルームメイトの子がハンドソープを持っていたので、借りて使っていたんですけど。テレビはありませんでしたが、あってもドイツ語だけでしょうし、なくても全然苦になりませんでした。それと個人的に気に入ったのは布団で、すごくふかふかしていて。好みはあると思いますが、気持ちよく寝れました。
-ネットはちゃんとつながりましたか?

瑚彩様:ゲストWi−Fiがあるということは聞いてたんですけど、万が一を考えて空港でイモトのWi−Fiを借りました。ポケットWi−Fiです。それでいつもやりくりしていました。使わない時は電源を切って充電して。Wi−Fiを持っている友達もいたので、たまに接続が悪い時、充電が切れそうな時はそれを貸してくれました。
-ルームメイトは何人ぐらいいらっしゃいました?

瑚彩様:私の部屋の場合は1人だったので、2人で部屋を使っていました。他の部屋は計3人のところもあったみたいです。2人か3人で部屋をシェアする仕組みなんだと思います。でも友達を自分の部屋に入れて遊んだり。何人部屋であろうと、出入りも自由でした。夜遅くにはしゃいでるとさすがに怒られますけど。私のルームメイトの子が、夜の2時ぐらいになっても平気で騒いでいたんです。うるさいのは別に勝手だけど、周りも起こしちゃうし、怒られるんだよ、って言ってもなかなか理解してもらえず、3回怒られてしまって…。
-ルームメイトは何人の方でしたか?

瑚彩様:イギリス人で、パーセルスクールに通っていました。彼女の友達2人もそこに通っていて、彼らと私で仲良くしていました。ただ、夜にうるさいと苦情が来た時にいつも謝るのは私でしたね…。年下だったこともあるのかなと思いましたが、もう少しそこは注意してほしかったかなと。もちろん楽しい思い出もたくさんありました。
-若い分、自分の国を離れてうきうきしちゃったんでしょうね。

瑚彩様:そうなんでしょうね、楽しいのは分かるんですけどね。注意してもなかなか聞いてもらえなかったので、逆に私が鍛えられましたね。
-宿泊先、泊まっているところから講習会までは歩いて移動ですか?

瑚彩様:はい。でも徒歩何分とかじゃなくて、ほぼ目の前にありました。歩道があって、その向かいに講習会場があって。ゲストハウスの横に、行けなかったんですけどコンサートホールもあって。本当に歩いてすぐでした。その同じ敷地内に、小さい森みたいな、公園かな、すごい木に囲まれた場所があって。犬の散歩をする人や、自転車が通れる道も敷いてありました。一般の人も通れる所でした。私はドイツ語のレッスンが終わったあと、気分転換に歩きながら習ったことを音読していました。空気も景色もきれいだし、歩き回っていましたね。やはり環境がすごいよかったです。本当に帰りたくなかったな。
-お昼や夜ご飯はどういったものを食べていましたか?

瑚彩様:一言で表すと、芋でした。ドイツの名産食べた?と友達からも聞かれたんですけど、これといったものは食べなかったかな、という。テレビで見るようなメニューは出てこなかったと思います。でもやはりポテトと肉がメインでしたね。チキンや魚、米も出ました。日本の米とは全然違いましたが。言っていいかわからないですけど、美味しいと思えるメニューが私的には少なかったです。でも三食作ってくれていたので、しっかり食べました。外食するという手もあったんですけど、申し訳ないし、何より知らない国で迷うのは怖いので…。残していた人も結構いたんですけどね。米と、魚にソースのかかった料理や、フルーツカレーのような料理が不評でした。これはどうやって命名すればいいんだろう?っていう料理が結構ありましたね。一緒にいた友達は、みんなおいしくないって言ってて。なんて言えばいいのか分からなくて曖昧に濁していたんですけど。それと、ルームメイトの子がベジタリアンだったんです。ベジタリアンメニューもあったんですが、肉に見えるものもあって。野菜もあったんですけど、彼女の好みには合わなかったみたいで、結局彼女が食べてたのはほとんどパンでした。そこは心配になりましたね。でも、私はそんなに不味くはないかな、っていう感じでした。外食に行ったエピソードとしては、コンサートの帰りに2回ほどメンバー全員でピザを食べました。最後のパーティーもまた違うピザ屋でやりました。なぜドイツなのにピザ?とつっこみたくなりましたが、美味しかったです。あとはシニアの方に、日本人メンバーで外食行くんだけどどう?って誘われたんです。留学されている方もいるし、人脈広がるかも!と思って行ったのがインド料理屋さんでした。タージマハルっていう名前が面白いなと思いました。驚いたのは、メニューにはないけどカレーを作ってくださったこと。ケイジャンチキンと数種類のカレー、ラッシーを、大勢で美味しく頂きました。
-海外の人たちとうまく付き合うコツみたいなのがあったら教えてください。

瑚彩様:父がアメリカ人の私は、小さい頃から結構英語に慣れ親しんできたほうだと思うんです。だから文法とか考えなくても、ある程度のレベルまでなら英語が話せるという感じで、言っていることは割と理解できて。ただ、まだまだ語彙力が足りなかったです。言いたいことが伝わらない、ということも多かったですね。コミュニケーションはとれていたんですけど、理解しきれないところもあったのが残念でした。そこで大切なのは、相手の話をちゃんと聞くということかなと思いました。真剣に耳を傾けてくれる人だと、なんとかして伝えようっていう気になりますし。それと、自分から積極的に話していかないと言いたいことが伝わらなかったり、話題が作れなかったりしました。といっても、参加していた人全員と話せたわけじゃないし、数人と仲良くしていたんですけど。英語が分かると、会話に参加できなくても内容は分かるので、言語の大切さと、積極的にならなければいけないことは痛感しましたね。
-なんとなく、普通にコミュニケーションとって、という感じですかね。

瑚彩様:そうですね。でもなんとなくというよりは、自分から英語を話して、あとはちゃんと聞いて。分からないことがあっても次に繋げることも大事ですね。そこで黙っちゃって終わり、ということもあったんですけどね。やはりお互いコミュニケーションをとろうという気持ちがないと、どっちかが折れるか、聞いていられないってなるか。せっかちな人とかもいると思うので。何が言いたいの?っていう雰囲気になられた時に、やっぱりいいやって折れちゃうと、お互い通じなくなると思います。言語の壁はあると思いますが、しっかり話していくことが大切だなと思いました。
-留学中に何か困ったことはありますか?

瑚彩様:洗濯ですかね。自分で洗濯物を持っていって、3ユーロ払って洗濯機で洗濯してもらうといった流れなんですが、乾燥機がないのを忘れていたんです。取り出した時に濡れていて、乾燥機はないのかと聞いたら、当たり前でしょと返されて。ああそうか、干すんだったなと。ラックがあるからそれで干してと言われ、乾かすんですが、それにとても時間がかかったんです。室内干しで、それも日光があまり当たらないところで。乾いたのにラックを占領するのもいけない、と思ってちょくちょく様子を見に行っていたんですけど、全然乾かない。12時ぐらいに洗濯しに行ったとしたら、16時、17時まで待っていないと乾かなかったですね。それも洗濯も毎日できるっていうわけでもなくて。日にちと時間が決まっていて、それを狙って洗濯をするんですね。早い者勝ちだったので割と早めに行っていました。ただ一回だけ、計算を間違えたのか洗濯をしなかったんですよ。そしたら靴下が足りなくなってしまってしまったんです。裸足でスニーカーを履くのはさすがにちょっとなぁ、と思って、お恥ずかしい話になるんですが、石けんで洗って干して、髪用のドライヤーで乾かしてやりくりしました。靴下はあまり持ってきていなかったので、それでやり切って。あとは着られる服を選別して着るという。だから、暑すぎず寒すぎず、汗をそんなにかかない気候で助かりました…。
-今回の講習会に参加してよかったなと思った瞬間があったら教えてもらってもいいですか?

瑚彩様:言語面では、言いたいことがなかなか伝わらなかったり、言っていることが分からなかったり、コミュニケーションが取りづらいこともありました。でも、友達との英語でのおしゃべりやみんなの演奏を聴けたり、ドイツの街並みを堪能できたり。日本では経験できないことをたくさん素晴らしい思い出にできました。忘れられない思い出のひとつに、こんなことがあったんです。私が演奏したコンサートで、1部と2部の間の休憩のときに、家族で来ていた奥さんが、あなたの演奏はとても素晴らしかったわ、ってわざわざ伝えてくださったんです。そこでは、ファイナルに残る2人も弾いていたんです。でも彼女が全員の演奏が終わった後に、私のお気に入り、やっぱりまだあなただったわ、と言ってくださって。演奏って、自分がうまく弾けると嬉しいし、逆にもっとできたなって思う時もあります。その時まだ満足のいく演奏ではなかったと思いましたが、初めて会って自分の演奏を聴いてもらった人に、すごいよかったよ、と言ってもらえるのがとてもうれしかったんです。さらに、ドイツ語のレッスンで、課外授業といった感じでしょうか、街に繰り出して、街にある様々な単語を習うといった時があったんですね。展望台に登って美しい景色を見たりだとか、パン屋に行ったりだとか。そしてその行ったパン屋で、偶然、私の演奏を褒めてくださった奥さんがいらしていたんです。お互い気づいて、彼女に少し時間をくれと言われて。何だろうと思って行ったら、プロでもないのにサインを書いてくださいと言われたんです。果たして、こんな光栄なことがあるのだろうか、としみじみと思いました。コンサートから数日経っているのに、あなたの演奏すごい好きだったよ、とまた言ってくださって。聞かれたのでファイナルには残れなかったんですと言ったら、え?行くと思っていたのに!と言われて。まだまだ足りないことはありますが、そう言ってもらえたのがとてもうれしかったですね。名前のサインと、ありがとうとメッセージを書いてあげたら、彼女もその旦那さんも子どもも、家族で笑顔になってくれて。みんな最後に握手までさせていただいて、それはもう、とっても心温まる瞬間でした。演奏は人を笑顔にするためにもあるのだと、誰かの笑顔のために弾くのだと。自分の演奏が、誰か1人でも幸せって思ってもらえたり、お気に入りの1人になれることは、やっぱり最高に素敵なことだなと思いました。
-今回ご自身で変わった部分、成長したなと思うことってありましたか?

瑚彩様:日本では割と10分前行動とかよくあるじゃないですか。集合時刻の少なくとも5分前までには集まるという。ルームメイトの子とその友達がよく一緒にいて、最初は彼女達と一緒に行かなきゃ、といった集団的心理が働いたんです。でもそのうち、同じ部屋ではあるけど言ってもダメなら、自分は先に行って時間を守らなきゃと気づいて。日常生活では、誰かを待っててあげるっていう、集団で行動することが多いと思うんですね。でもそこではそういうのがなくて、自分のしたいことをその時するっていう。もしかしたら彼女たちだけだったのかもしれませんが…。何をするにも自己責任というのが多かったです。先程鍛えられたと言いましたが、自分で時間をしっかり守って自主的に行動することができるようになったと思います。自分で考えて理解して行動に移す、といったパターンですかね。分からなかったら聞かなきゃいけないっていう状況に置かれていたので、後に家族からテキパキするようになったね、と言われました。一時的なものかもしれないんですけど、自分から進んで行動するっていうのが向こうでは大切だったので。
-今後留学をする人にアドバイスがあったら教えてもらってもいいですか?

瑚彩様:英語が話される地域に行くと、本当に日本語を話す人がいないんです。日本人がいたとしても、彼らとだけになります。スタッフさんも空港も、日本以外は全て英語でした。だから、英語が分からないと結構辛いのかなと思います。講習会のスケジュールも英語で書かれていますし、掲示板も英語でした。コミュニケーションをとるにも、日本人の方と一緒にいるならいいんですけど、せっかく国外まで来たんだから、いろんな方と交流を深めることをしたいなと私は思って積極的に英語を使いました。みんなと仲良くなれるわけではなくても、母国語でない言語で話し、異文化に触れるというとてもいい機会になるので。だから、コミュニケーションツールは、言語に関わらず、誰か友達を作っていくと、話したり遊べたりで楽しいです。思うように話せなくても相手が聞いてくれると、会話ができるので。知っている単語を並べていけば、予測もされやすいと思いますし。それと、ルールを守ること。レッスン時間はもちろん、コンサートに行く時のバスだったり、時間厳守の機会は結構ありました。守れなかったときに自分が損するだけならまだいいんですけど、迷惑をかけてしまう人もたくさんいる場所なので。自分のことは自分でしっかりやるという責任感があったほうがいいと思います。それと友達を作れば、一緒にいると聞けるし、自分も話せるし。誰か話せる人がいるほうが、様々な面でも心強いし、何より楽しいと思います。
-今後の活動とか進路、目標みたいなものがあったら教えてもらえますか?

瑚彩様:今回ドイツへ行って講習会に参加し、様々な面で鍛えられましたし、気候や街並みもとても好きでした。来年はまた、違う国の講習に行ってみたいなと強く思いました。それと何より思ったのは、日本は狭いなということ。集団的だったり、価値観は多数派が一般的であったりすると思うんです。それもそれでいいとは思うんですけど、私はもっと個人の意見が生きてくる、自由な雰囲気が好きかなと思います。だから、高校を卒業したら、ヨーロッパへの留学を考えています。国は決まっていないんですが、音楽が身近にあり、人種や生き方がたくさんあるところでピアノを、音楽を学びたいなと。日本はそうではなくて悪いと言うわけではないんです。ただ、音楽にしても、様々な作曲家の生まれの国であったりとか、名ピアニストがその国で育ったとか。そういうことをしっかり調べて、自分の好きな音や文化のある国を見つけて勉強したいと思っています。
-貴重なお話をありがとうございました。

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