フランス音楽留学
1) なぜフランスに音楽留学?
フランスは1669年ルイ14世によって王立音楽アカデミーが設立されたバロック音楽の時代から今に至るまで、ヨーロッパの音楽教育の中心の1つであり続けています。1795年にオペラ座楽団の演奏家育成を目的に音楽院(現在のパリ国立高等音楽院)が設立されて以来、フランスは200年以上に渡り音楽教育、演奏技術の伝承の体系化を進めて来ました。現在ではパリ国立高等音楽院およびリヨン国立高等音楽院(CNSM)と、オペラ座バレエ学校を筆頭に、各地で音楽やバレエを学べる地方音楽院(CRR)が設置されており、どこの都市でも統一した課程に基づいた充実した教育を受けることができます。コンセルヴァトワールという言葉が音楽院と訳されるため誤解されがちですが、各音楽院では、クラシックバレエ、コンテンポラリーダンスの専攻があり、表現に必要なマイムや民族ダンスなどを含め体系的に教えられています。
更に数は少ないですが、音楽ではエコールノルマル音楽院やスコラカントルム音楽院、バレエではスタンロバやグべ・バレエセンターなど、魅力的な私立の学校もあります。また、公立の教育機関は国の支援があるため授業料が安く(国立高等音楽院で2022年現在、年間授業料約7万円程度など)、私立も比較的低く抑えられています。
フランス音楽留学の魅力は音楽院だけではありません。パリには、伝統的なオペラ座ガルニエ宮や最新の音響設備のあるフィルハーモニーを始め、素晴らしいホールが沢山あり世界中の演奏家がやって来ます。パリ管弦楽団やウィーンフィルの定期公演、オペラやバレエ、アルゲリッチなど人気ソリストのリサイタルなどに、国の支援のおかげで学生さんはとてもリーズナブルに行くことができます。地方の音楽院を選べば、その地の独自文化や自然の中でのフェスティバル、パリにはない魅了を満喫できるでしょう。もちろん地方都市にはそれぞれ自慢のホールとオーケストラやオペラ、バレエ団があります。コンサートに安く気楽に行けるというのは、とても素敵なことです。お目当ての演奏会以外に、「学生料金だしね」とたまたま行ってみた新作の打楽器コンチェルトに大感動、なんてこともあるんです。
そしてフランスにいらしたら、是非とも数ある美術館を巡り、モーツアルトが演奏したお城を訪ね、季節ごとの野菜が並ぶマルシェを歩き、おしゃべりで好奇心旺盛なフランス人学生とカフェで交流して、五感にいっぱいの刺激を受けてください。その豊かな経験が表現力の幅を広げると、フランスの先生方は信じています。 フランスはヨーロッパの中心に位置していますから、留学中に気になっていたヨーロッパ各国の夏期講習などに積極的に参加するのもおすすめです!
2) どの学校に音楽留学する?
〜フランスの音楽大学・音楽院の仕組み〜
全国的に体系化されていて、音楽院(コンセルヴァトワール)の入門レベルには、5-6歳から選別なく申し込み順に入ることができます。(パリの親たちはそのために早朝から並びます!)パリ市やボルドー市など大きな行政区では、その様な初心者の教育を担当するのは、区立音楽院、その他の各地域では地方音楽院や県立音楽院です。初級から始まり毎年進級試験があり、本格的なレベルになるのは、入学試験のあるスペシャリゼ課程からです。この辺りから、一般の日本の留学生にも関わってきます。
日本から音楽留学をお考えの皆様が興味をお持ちになるのは、主に2つのパターンです。
1 音大受験生、音楽大学在籍中あるいは卒業生で、フランスで研鑽を積みたい方
最難関公立音楽院コース:
パリ国立高等音楽院の学部課程(3年)または大学院(2年)の合格を目指す。(年齢制限に注意)フランス人の音楽学生はここを最終目標とします。
夏期講習、短期ステイ、オンラインレッスンなど(全てアンドビジョンで手配可能)を利用してフランス向けの受験対策をしながら直接日本から渡仏し、パリ国立高等音楽院を受験する。またはフランス人音楽学生の様に、パリ地方音楽院のコンサーティスト課程、スペシャリゼ課程、CPES課程などに一度入り、パリ国立高等音楽院の受験準備して1年目の冬〜春に受験する。基本3回まで受験可能です。年齢制限や希望によっては、リヨン国立高等音楽院も受験していきます(国立高等音楽院はこの2校しかありません。)
入学後は、在学中にヨーロッパの他の学校との交換留学プログラムがあり、ヨーロッパで音楽の仕事ができる可能性がぐっと拡がります。
フランス国音楽家ディプロム、学士号、修士号が取得可能
難関公立音楽院コース:
地方音楽院のコンサーティストコース、スペシャリゼコースの合格を目指す(年齢制限に注意。)日本で音大に行っていない方の場合、地方音楽院のポール・スュップ(学部課程)の合格を目指すケースも多くなっています(受験資格に注意。) パリやリヨンの国立音楽院の学生枠が非常に少ない(ピアノやバイオリンで2-30人程度、フルートは2-5人程度)ため、地方音楽院を第2−3志望とする学生はフランス人にも沢山います。
地方音楽院は全部で44校あり、パリ地方音楽院は国立高等音楽院受験対策のクラス(CPES)もあることから、他の地方音楽院より全体的にレベルが高くなっています。他にも、パリ周辺ではバロック音楽教育に秀でたヴェルサイユ、パリ国立高等音楽院への合格者も多く出しているサンモールやブローニュ、地方大都市のストラスブール、リヨン、トゥールーズ、ニースの音楽院など、魅力的な音楽院が沢山あります。 学部課程では在学中にヨーロッパの他の学校との交換留学プログラムがあり、ヨーロッパで音楽の仕事ができる可能性が拡がります。
フランス国音楽家ディプロム、学士号、公認音楽ディプロムを取得可能
私立音楽院コース:
年齢制限がなく入学は難しくないが、レベル分けがされていて、中級から最難関まで実力に見合ったレッスンが受けられます。国立や地方音楽院を引退(64歳前後)された有名教授などからレッスンが受けられ、必須科目が少なく、コンクール準備などに集中できます。留学生が多いのは、フランス人にとっては音楽を仕事とする場合、公的ディプロムが必須という考えがあるからで、楽器の個別レッスンの質は私立音楽院でも高いことに違いはありません。
各学校が発行するディプロムを取得可能
近年、スコラカントルム音楽院、エコールノルマル音楽院も一般大学と提携して学士号など公的ディプロムを発行する仕組みを作りました。まだ実験的に年に数人という段階ですが、ご興味のある方はアンドビジョンまでご相談ください。
2 大人になって趣味を極めたい方
入学に年齢制限のない私立の音楽院や、バレエスクールがおすすめです。公立の音楽院やバレエ学校は生徒数の枠が少なく、教職のポストも少ないのが現実です。そのため、素晴らしい先生が私立で教えていらっしゃるケースが沢山あります。現役のオーケストラのソリストの先生も、自由のきく私立で教えている方も多く、スタンロバではオペラ座の元エトワールが大人向けのレッスンをしており、現役ダンサーもコンディション調整のために、ふと参加されたりしています!
3) フランスで何を学ぶ?
〜フランスの音楽学校での専門科目、教育の特徴〜
各音楽院では、各楽器、声楽、作曲、音楽書法、ソルフェージュ(音楽教育)などの他、バロックやジャズなどの専攻があります。日本での専門科目の更なる研鑽はもちろん、フランスで新たな専門を極める方もいます。ピアノで音楽留学された学生さんがフランスでフォルテピアノに出会い、ヴェルサイユの古楽器科で専門的に学び、日本での普及を目指し芸大の大学院に入られたケース。ドイツにフルート音楽留学された後ピッコロを専門的に学べるのはフランスだけだからと、フランスの地方音楽院のピッコロ科にいらした学生さんもいます。
またフランスの音楽教育の特徴として、小学生の頃から室内楽やオーケストラが必須であること、早い段階から現代音楽が試験課題に入ること、楽曲分析や音楽スタイルの教育に熱心であること、が挙げられると思います。楽器の練習に明け暮れる、というよりは総合的に音楽を学ぶことを目指しています。
最近の大きな国際コンクールでは、短い準備期間で室内楽の演奏を求められることがあります。初見力、聴く力、音楽的なコミュニケーション能力などを、フランスの音楽院では室内楽、初見などの授業からしっかり学ぶことができます。現代曲も必ず課題に入って来ますので、好き嫌いを超えて慣れていくことができます。また、時には作曲家の先生から直接、指導を受けることもできます。 楽曲分析に熱心だ、という伝統は、音楽表現の根拠として、各先生のレッスンにも楽曲構成や和声展開などの説明をすることが多く、試験の評価にも楽曲や音楽スタイルの理解が求められています。その結果、学生さん達も、理論体系を納得した上で堂々とご自身の表現ができる様になっていきます。
フランスに親子で音楽留学、中高生の音楽留学: Double-Cursus
〜音楽院と小中高とのダブルスクールで自由な未来を〜
フランスの特徴的なコースで、子供の将来に向けて音楽と学業を無理なく両立できるとして、フランス国内でも非常に人気の高いクラスです。その影響から年々海外からの親子留学も増えています。ダブルスクールの最終段階では、パリ国立高等音楽院の学部課程と、一般の難関大学の学部課程の両方に進むことが仕組み的には可能です。日本からの場合、ほとんどの方がパリを選びますので、パリを例にご説明します。
小学校3年生から始まるパリ地方音楽院のダブルコース(各学年各楽器で数名程度)に合格すると、提携する公立小学校・中学校・高校と音楽院の両方で学ぶことができます。 具体的には午前中、学校内の子供用のダブルコース特別クラスに行き、半日で学校の授業を集中的に学びます。午後は、マイクロバスで音楽院に移動し、個別レッスン、ソルフェージュ、アンサンブルなどの授業を受けたり、個人練習をしたりします。
コンバト(パリ国立高等音楽院)に14歳で合格、というような履歴を目にする機会があるかと思いますが、早期入学は、現在ではこの仕組みを利用しているケースがほとんどです。教育熱心な家庭の子供が多いので、学業のレベルは一般クラスに比べて高く、最終的に音楽を選ばず一般難関大学や医学部に進む生徒もいます。前述した通り、勉強量も多く大変ですが、両方をやる子もいます。ダブルスクールだと一般の学校の勉強が楽、という訳では全くなく、親がフランス語を話さない場合は特に、現地大学生の家庭教師などの助けが必要です(詳しくはアンドビジョンカウンセラーまでご相談ください。)
ダブルコースの生徒達は、音楽やバレエという共通の目的があるので、人種を超えて仲良くなりやすく、小中学生は特に親同士の交流も盛んです(フランスなので、交流しなくてももちろん大丈夫です。)大きなホールでの演奏機会があったり、みんなで田舎の講習会に行って思い切り遊びまわったり、練習に追われるだけでなく、豊かな人生経験が積める環境があります。
フランスでは法律的にも小中学生は親子音楽留学が基本ですが、16歳以降は未成年の音楽・バレエ学生向きの寮があり、アンドビジョンのフランス現地スタッフが法的責任者となることで、個人留学が可能です。またオペラ座バレエ学校やパリ国立高等音楽院(両方とも付属の寮がある)に合格した場合、16歳以下でも個人留学が可能な場合があります。
いずれにせよ、バカロレア(高校卒業時に受ける大学入学資格)までは、学業は必須と考えられており、音楽院のみの通学は勧められていません。学校は現地校なのでもちろんフランス語です。中3位までにいらっしゃれば、勉学も何とかなるケースが多いですが、高校からいらっしゃる場合は、フランス語で高校レベルの授業を受けることが難しく、通信などで日本の高校卒業をするなど対応をご一緒に検討しています。
アンドビジョン・フランス現地スタッフ