鈴木さん/ピアノ/ショパン音楽大学・モスクワ音楽院冬期講習会 /ポーランド・ロシア

鈴木さん/ピアノ/ショパン音楽大学・モスクワ音楽院冬期講習会 /ポーランド・ロシア

鈴木さんプロフィール
東京音楽大学卒業。2010年現在、ポーランド・ショパン音楽大学在学中。2010年ロシア・モスクワ音楽院冬期講習会受講。
-まず、鈴木さんの簡単なご経歴を教えてください。

鈴木  東京音楽大学卒業後、ポーランドに渡り、現在ショパン音楽大学に留学中です。
-本科にいらっしゃるんですか?

鈴木  本科ではなく、外国人専用コースみたいなところにいます。
-なぜロシアに行こうと思われたんですか?

鈴木  昔からショパンが好きだったんですけど、勉強していくうちに、だんだんロシア音楽に興味が出てきたんです。また、コンクールなどで見かけるロシア人のテクニックの素晴らしさに感動して、ロシアに行ってみたいな、と思うようになりました。
-そういった経緯があったんですね、これまでに講習会に参加されたご経験は?

鈴木  4年前に、ワルシャワ音楽大学の講習会に参加したことがあります。
-それがきっかけで、ショパン音楽大学に留学を決意されたんですか?

鈴木  その時に今の先生に出会って、この先生に習いたいと思いまして。
-講習会での先生との出会いがきっかけという方は多いですね。今の先生はどんな方ですか?

鈴木  カジミエシ・ギエルジョド先生という方で、日本の大学で客員教授をされていたこともある先生です。
-ロシアの講習会のお話をおうかがいしたいのですが、参加者は何人くらいでしたか?

鈴木  10人はいなかった気がします。私以外は全員外国人で、イランとかイタリアとかからもいらしていました。
-基本的にはヨーロッパ系の方々ですか?

鈴木  いえ、インドやアメリカなど、いろんな国の人がいて面白かったです。
-面白そうですね。どんなスケジュールが組まれていましたか?

鈴木  レッスンの日にちが決められて、先生が決められてという感じですね。あと、希望者を募って、バスツアーみたいなのもありました。
-鈴木さんは行かれたんですか?

鈴木  集合場所に行ったんですけど、手違いがあったみたいで、連れて行ってもらえませんでした(笑)。スケジュールとしては、きっちりプランが組まれているわけではなく、自由な感じでしたね。
-ルームメイトはどんな方でしたか?

鈴木  ロシアの別の都市から来た、18歳の子でした。
-コミュニケーションは何語ですか?

鈴木  基本は英語でしたね。ほかの人とも英語で話していました。
-先生のことをお聞かせください。

鈴木  先生の指定をせずに行ったんですけど、たまたま教えてくださった先生が彼女だったんです。実は初めて会ったとき、あまりフレンドリーな先生には見えなかったんですよ。レッスン室に入ったら、足を組んで、肩肘ついてという感じで(笑)。一体どんな先生なんだろうって感じで最初のレッスンは始まりました。
-レッスンではどんなことを教わりましたか、印象に残っていることを教えてください。

鈴木  私がちょっと弾いたらストップ、ちょっと弾いたらストップなんです。もう、小節ごとにストップがかかるという感じで、ひとつひとつの音符を分析しながらレッスンが進んでいきます。私が今習っているポーランドの先生も、一つ一つの音に意味があるという教えの方なので、今は慣れましたけどね。それ以上に分析をする先生で、すごい説得力もあるし、そういう考え方があるんだなって勉強になりました。
-新しいことが学べてよかったですね。レッスンは何語で行われたんですか?

鈴木  先生はロシア語でレッスンしてくださいました。通訳の方は、日本人の生徒さんだったんですよ。4〜5年、むこうに住んでいらっしゃる人で、ロシア語が堪能な方でした。
-レッスン内容を理解するのは問題かったんですね。練習はどこでされたんですか?

鈴木  講習生用に1日5時間っていう練習時間を設けてくださっていまして、決められた時間内で、自由に使えるようになっていました。
-では、十分な時間練習できたんですね。他の講習会だと、一人2時間などと決められているようですからね。

鈴木  でも、せっかく講習会に来たのに、練習だけしてても・・・とも思いますよ。
-そうですよね。レッスンや練習時間以外は何をされていましたか?

鈴木  散歩が好きなので、ぷらっとクレムリン教会の方までいったり。
-寒くなかったですか?

鈴木  寒かったです(笑)。
-ポーランドも寒いんですか?

鈴木  ロシアほどではないですけど、今年は雪も降りましたし。でも、寒い国って暖房の管理がしっかりしているみたいで、室内では半そででもOKなくらいの暖かさなんですよ。
-外を耐え抜けば、中は暖かいんですね。治安など、街の様子はどうでしたか?

鈴木  大学の近辺は、人通りも車通りもすごく多くって、栄えてるなって気はしました。
-ロシアは人が冷たいという印象を持たれる方もいらっしゃいますが・・・

鈴木  ポーランドに来て思ったことは、ヨーロッパ近辺の人って、基本的に接客の態度が悪いですよ(笑)。お釣りをポンとなげるように置いてみたり。だからといって、人が冷たいと言うわけではないですね。
-気の持ちようもありますね。危ない目に合うということはなかったですか?

鈴木  全然ありませんでした。
-よかったですね。ロシアは学生会がしっかりしてますもんね。宿泊先は寮だったんですよね?

鈴木  私もそう思っていたんですけど、ゲストハウスっていう専用の棟があって、そこに泊まっていました。
-そうだったですか。そこのゲストハウスはどうでしたか?

鈴木  すごいキレイでした。初日に水が出なくて困りましたけど。しょっちゅう水は止まるみたいですね、またかって感じでしたから(笑)。
-大家さんはどんな方でしたか?

鈴木  彼女はロシア語しか話せないので、あまりお話は出来なかったですけど、優しい方でした。
-宿泊先と講習会場は近かったんですか?

鈴木  大学のすぐ近くで、歩いて2分くらいでした。
-それは良かったですね。ご飯は何を食べてましたか?

鈴木  毎食、学食で食べていました。
-ロシア料理なんですか?

鈴木  どうなんでしょう?ふかしたジャガイモやご飯とか・・・。肉料理も多かった気がします。バイキングで好きなものを食べるんですけど。おいしかったですよ。
-外食はされなかったんですか?

鈴木  みんなでビール飲みに行きました。地ビールというかロシアのビールを飲みました。あとはウォッカですね。
-講習会以外でも楽しめて良かったですね。では、海外の人とうまく付き合うコツを教えてください。

鈴木  日本人と欧米人では、顔かたちも違いますから、最初は話しかけにくいなって感じていたんです。でも、実際話してみると気さくだったり親切だったりするので、見かけで判断しないことですかね(笑)。
-友達になるチャンスですからね。鈴木さんは明るいから、すんなり仲良くなれるタイプじゃないんですか?

鈴木  これ言ったらどうなるんだろう?とか、あまり深く考えないようにしながら、勇気を出して話しかけたりはしてますけど。
-話さないと分かってもらえないですからね。講習会で困ったことはありましたか?

鈴木  特になかったです。
-今回、参加して良かったと思えた瞬間は?

鈴木  最近、ずっとピアノのことで悩んでいて、そのまま講習会に参加したんです。でも、最終日に先生が背中を押してくれるようなことを言ってくださって・・・。また音楽をがんばろうって思えたことですね。
-それを受けて、新たな目標などは生まれましたか?

鈴木  英語の必要性を感じましたね。コミュニケーションを取るのに必要ですよね、やっぱり。
-基本的に、話せる言語はポーランド語ですか?

鈴木  ちゃんと勉強しているのはポーランド語です。
-音楽家になるにしても、英語は話せて損はないものですからね。では、日本とロシアで大きく違う点は何でしょうか?

鈴木  偏見ですけど、日本って、一から十まできちんと型にはめられている印象があるんですよね。電車にしても1〜2分遅れただけで、アナウンスが流れるじゃないですか。完璧主義と言うか。レッスンにしても、生徒は完全に受身の状態なんですよ。こちらに来てから、日本は、ちゃんとしないといけない国なんだな、って感じるようになりました。
-こんなにきちんとしている国は日本だけって言われますものね。さて、鈴木さんがポーランドに留学されたのは、日本の先生の影響もあったんですか?

鈴木  ショパンがずっと好きで、ずっと憧れていたので、自分で決めました。
-反対はなかったですか?

鈴木  大学時代に教えてくださった先生が、ポーランドの同じ大学で1年間留学されたことがあったそうで、いろいろ教えてくださっていたんです。それだけに、私なんかが、その学校に留学したいというのが怖くて、こっそり準備を進めていました(笑)。卒業する間際に、先生と2人で食事をする機会があって、そこで告白しました。「ずっと秘密にしていたことがあるんですけど、実は来年留学をすることにしました。」って。先生は、頑張って来なさいねって応援してくださいました。
-先生も同じ経験をされていたから、好意的だったんでしょうね。ポーランドの大学に行く準備も、自力でなさったと言うことですか?

鈴木  そうですね。講習会の後も、先生にポーランドでレッスンをしていただいたことがありまして、こちらに来てみたら?と言っていただいて。あとは住む場所ですね。最初は寮に住もうということで、事務の人に手配をしてもらいました。
-苦労したことはありましたか?

鈴木  卒業してから1年間、留学費用を貯めるためにバイトをしながら準備をしましたから、やっぱり大変でしたね。大学からの返事が遅くて、どうしたんだろうと悶々としたり・・・。
-そういう時は先生に相談されたんですか?

鈴木  それは最終手段でしたね。なるべく先生にご迷惑をかけたくなかったので。現地に住んでる日本人の方にお話を聞いたりしました。
-留学準備は、だいぶ前から始めたんですか?

鈴木  1年くらいですかね。一番大変なのはビザの申請でした。入学証明書が必要なんですけど、なかなか作ってもらえずに。
-どこもビザの取得は大変ですね。申請は日本でされたんですか?

鈴木  日本の大使館でも申請できますし、現地でも可能です。ただ、提出書類が多いので、なかなか難しいと思いますよ。
-語学は今も勉強しているんですか?

鈴木  はい、語学の勉強とレッスンをしています。日本では全然勉強できませんでしたからね。ポーランド語はマイナーな言語なので、授業や語学学校がなかなかないですから。
-学校はどんな雰囲気なんですか?

鈴木  明るいですよ。みんな楽しそうにしています。
-日本人もけっこういらっしゃるんですか?

鈴木  日本人は20人弱ですね。今は日本人より韓国や中国の方が多いです。
-今、どこでもそうみたいですね。日本とポーランドはどう違いますか?

鈴木  ポーランドは、全てゆるいです(笑)。レッスンも時間通りに始まらないし、バスや電車も平気で10分20分は来ないし。一番びっくりしたのが、3両くらいある電車のうち、1両のドアが開きっぱなしで走っていたことです。
-怖い!

鈴木  日本じゃ大問題ですよね(笑)。そんなこともポーランドの人は、こんなもんだという感じで。よく言えばおおらかですよね。
-日ごろの練習はどうされているんですか?

鈴木  今はホームステイの生活に変わりまして、たまたまホームステイ先にピアノがあって、それで練習させてもらってます。
-どのくらい練習していますか?

鈴木  多い時は10時間くらい。だいたい7〜8時間くらいでしょうか?日本であまりやらなかった分、頑張っています。
-実りの多いレッスンだと予習復習が必要になるでしょうからね。学外でコンサートやセッションはありますか?

鈴木  コンサートはけっこうやってますね。今年はショパンコンクールの年ですので、いろんなホールでショパンのコンサートだらけです。けっこう行きますよ。
-普段の一日のスケジュールはどんな感じですか?

鈴木  私の入っているコースは、基本はレッスンのみなんですよ。なので週一回でレッスンが1時間半から2時間あるだけです。語学の勉強は、学校と別なところでやっているんですけど、そちらは週2回です。
-そうなんですか。授業以外は、友達と遊びに行ったりしますか?

鈴木  私の場合は練習で一日が終わっていくんですよ。あとは散歩ですね。散歩が好きなんです。
-ポーランドの街並は、歩いていて楽しいですか?

鈴木  とてものどかな国なので、自然も多いし公園もたくさんあるので素敵ですよ。
-リフレッシュするには素晴らしい環境なんですね。

鈴木  ワルシャワは一応ポーランドの首都ですけれども、都会って感じはしないですね。
-生活費は、1ヶ月どのくらいかかるんですか?

鈴木  それぞれの家賃にもよるんでしょうけど、私の場合は、全部あわせて7〜8万円くらいでしょうか、物価も安い国なので。
-ポーランドに留学して良かったな、と思える瞬間は?

鈴木  日本で勉強しているときは、完全に受身の状態だったんです。でも、こっちに来て、自分で音楽を作ろうという意欲が出てきたので、勉強する上では良かったと思います。
-レッスンは、先生と話し合いながら進めていく感じですか?

鈴木  私の先生は、こうしなさいああしなさいとは言わない方なんです。ベースはきちんと教えてくれるんですけど、表現方法や弾き方は、自分で音を聴いて自分で弾いてみなさいという感じなので。
-弾いた上で、先生が意見をくださるという感じですか?

鈴木  そうですね。そういうレッスンは今までなかったです。
-鈴木さんの気持ちも成長できますね。

鈴木  人として成長しないと、音楽も成長しないと思いますからね。
-そういう風に考えられるようになったことも、留学して良かったことなのかもしれないですね。今後はどういった進路を考えていらっしゃいますか?

鈴木  ここで演奏のお仕事が出来れば、やっていきたいなと思っています。
-ショパン音大には、あとどのくらいいらっしゃる予定ですか?

鈴木  2年です。その後、別の国に行って勉強できたらいいなと思っています。まだ全然決まってないんですけど、今回ロシアの先生に教わって、すごく勉強になったので。もっと勉強しなければいけないと思うようになりました。
-頑張ってください!では、これから留学する人に、心がけることやアドバイスがあればお願いします。

鈴木  逆に、心がけていかなきゃ!って思わないことですかね。気を張って、こうしなきゃいけないみたいに考えないほうがいいかもしれません。
-なるほど。ポーランドに留学される方は少ないので、とても勉強になりました。ありがとうございました!

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