辰身亜紀さん/ピアノ/アレグロ・ヴィーヴォ室内楽マスタークラス/オーストリア・ホルン

辰身亜紀さん/ピアノ/アレグロ・ヴィーヴォ室内楽マスタークラス/オーストリア・ホルン
国立音楽大学卒。現在はピアノ講師。
-簡単な自己紹介ということで、今までの音楽歴を教えてください。

A.T 音楽は大学からです。中高は普通の学校だったのですが、ピアノをずっと習っていて好きだったので、大学は音大に行きたいなと。大学に入ってから楽しくなって、室内楽を3年生から専門にしました。
-今まで講習会に参加したことはありましたか?

A.T ありません。
-海外は行かれたことはありますか?

A.T 一年前くらいに韓国に行ったくらいで、ヨーロッパなどはまったくありません。
-今回、この講習会を選んだ理由はありますか?

A.T 室内楽で検索したのと、日程が一番合っていたこと、それとオーディションなし、アマチュアでも参加できるということで、ラフな感じなのかなと思って選びました。
-はじめて参加されてみていかがでしたか?

A.T リピーターとして来ている人が多かったです。小さい子でも家族と一緒に夏休みはアレグロヴィーヴォに毎年来ているとか。なので、分からないことを教えてくれる人が多かったです。
-現地の方とはコミュニケーションはとりましたか?

A.T スーパーとかで地元の方と少し、あとは講習会の中でした。
-全体の参加者の人数はわかりますか?

A.T 小学生のコースとマスタークラスにわかれていて、小学生はわからないのですが、マスタークラスは70人くらいだったと思います。
-どういう国の人が多かったですか?

A.T アジア圏もいましたが幅広いです。アメリカからと、ヨーロッパのドイツ、オーストリアからは多かったですね。ロシア、韓国、中国、イランとかも…日本人も4~5人はいました。
-ピアノのクラスは何人くらいですか?

A.T ピアノは全体的に少なかったのですが、私の先生の所は10人くらいだったと思います。その中で日本人は私一人です。他の日本人はバイオリンが多かったです。
-同じピアノ科の方とお友達になったりとかは?

A.T 同じクラスの中で、ドイツ人と仲良くなりました。会話は英語です。むこうも無理矢理英語を話してくれて、お互い間違った英語でなんとかカタコトで話をしていました(笑)。
-ではコミュニケーションは結構とれた感じですね。しっかりご準備をなさっていましたものね。

A.T 英語はあまり自信がなかったのですが、どうにかなるかな、と。実際どうにかなりました(笑)。
-講習会のスケジュールはいかがでしたか?

A.T 到着した日はコンサートを観に行っただけだったのですが、その次の日の日曜日はずっと自由時間でした。その夜にミーティングがあり参加者全員で集まって、先生も来て、パンなどを食べながらお話を聞いて、その後自分の先生の所に集まって最初のレッスンの日程を決めました。「あなたはいつ来てください」と言われるので、その日に行くという流れです。
-初回のレッスンを決めるだけで、それ以降はその都度ですか?

A.T そうです。
-室内楽の授業はありましたか?

A.T ありました。その次の日に室内楽のミーティングもあって、室内楽をとっている人が集まって、「あなたは何の楽器なの?」という所から始まりました。去年参加した人は「去年は何をやった」と伝えたりして、それを踏まえて先生達が編成を組みました。講習会は1週間くらいしか練習できないので、曲も簡単なものを選んでもらって。私はハイドンのピアノトリオという編成になったのですが。そのレッスンも週に2~3回はありました。
-では室内楽もその場で組んで、という感じだったのですね。

A.T そうです。
-ピアノのレッスンはどれくらいありましたか?

A.T 2週間のうち5日ありました。
-結構みっちりですね。コンサートなどには出られましたか?

A.T 最後の週の午前中が全部コンサートなんですね。そこで弾きたい人は弾いていいような感じで。それも選抜だと思っていたのですが、「弾きなさいよ」と言われてしまって(笑)。「そういうつもりで準備はしてこなかったけど!」と思ったのですが、せっかくだし参加しました。会場は2つくらいあって、どちらかの会場に振り分けされるのですが、ピアノを弾いたり室内楽もやったり、結構自由でした。
-先生や事務局との会話も英語で?

A.T そうです。
-困ったりはしませんでしたか?

A.T 事務局の人はみんな英語でしゃべってくれました。若い人もいれば80歳くらいのおばあちゃんもいるのですが、分からないことがあれば親切に調べてくれるし、楽譜もそこで借りるのですが全部選んでくれたりと、なんでもやってくれました。
-今回の先生はどんな感じでしたか?

A.T 結構細かいなという印象です。ロシア人なのですが、韓国の音大で教えているようで、そこの生徒さんが4~5人くらいまとまって来ていました。彼らはまとまっていて、その他先生のお母さんもピアニストで講習会に一緒に来ていたんですね。そのお母さんに習っているロシアの生徒さんや、すごい才能のある中国の子なども来ていました。その方々がまとまって行動する感じだったので、すごく文化の違いを感じましたね。
また、日本で習ったことと正反対のことを教えられることにビックリしました。モーツァルトにしても、アレグロだからこのくらいだろうと思って弾くと、「それは早い」と言われて、「こんなにゆっくり弾かなくちゃならないの?」と思ったり。弾き方もロシア人だな、という印象でした。ガッツリ弾きなさい、というような。「あなたの先生はなんでこう言ったの?僕は違うと思うよ」と言われることもあって、考え方も違うんだなと思いました。
-それを言われて、A.Tさんはどう思ったのですか?

A.T 「え、違うでしょ?!」と思いましたけど、実際に先生が弾いてくれると、先生が上手いからどういう弾き方をされても悪くないなと思ってしまう自分もいて、どっちを信用していいのかすごく迷いました。自分が習ってきたことと今先生に言われていることと。最後の発表会なども、先生も観にきてくださっているので言われたように直すのですが、やっぱり1週間では直せなくて、それが難しかったです。
-考え方の違いなんですかね?

A.T 日本人や韓国人は話す時にダ~~としゃべるから、言葉にアクセントがないと言われました。ドイツ語などはアクセントがあって、そういうものを音楽の中でつけなさいと。だから日本人や韓国人の演奏を聞いていると全然アクセントがないということでした。
-なるほど。他に印象に残っていることはありますか?

A.T 室内楽のレッスンは、先生がチェロの人だったので、バイオリンとチェロに言うことが多くて、ピアノはほとんど言われなかったですね。なので分からないことがあったら自分で質問をしないとあんまり参加している感じがなくて。でもすごくいい先生でした。
-レッスンは全部英語ですか?

A.T バイオリンとチェロがドイツ圏の子だったので、その子達に言う時はドイツ語、私にもわかるようにする時は英語、というように。ピアノのロシア人の先生とは英語でした。
-練習はどうでしたか?

A.T 毎日3時間振り分けられていて、ホテルの練習室で行いました。アップライトなのですが、ミューゼンドルファのアップライトもあったりして、そんなに悪くはなかったです。それと近所のホールのような所の舞台も練習室として使えることが1回ありました。そこはベゼンだったのですが、一人で貸切ホールで。
-贅沢ですね!それも割り振られて?

A.T そうですね。
-練習時間などで困ったこともなく?

A.T はい。でもそのホールで練習する時は、ホールに行ったけれど誰もいなくて鍵も開いていなくて、「ここはどうやって入ればいいのだろう」と。事務局に行って鍵をもらって、自分で入ってと言われたはいいものの、「入ったけど電気はどうすれば!」となって、電話して聞いて、電気はつけたものの、後から入ってきた人に、「あなた全部の電気をつけてるじゃないの!」と言われたり(笑)
-練習とレッスン以外の時間は何をされていましたか?

A.T 買い物に行ったり、私はピアノトリオ以外にブラームスのバイオリンソナタをやっていたので、その子とあわせたりとか。
-その子はたまたま知り合ったのですか?

A.T そうです。カリフォルニアから家族で来ていた15歳の子でした。
その子は4回アレグロヴィーヴォに来ていて知り尽くしていたので、やけに図々しくする人だったんです。お母さんも教育ママ的で。「あなたやりたいんだったらうちの娘とやれば?」みたいな(笑)。せっかくやるんだったら誰か先生にみてもらった方がいいとなったのですが、室内楽は室内楽で授業があるし、私のピアノの先生もそういう感じではないので、「だったら去年お世話になった先生がいるから話つけてくるわよ!」と。女の先生だったのですが「もちろんいいわよ」と言ってくれて、特別にプライベートレッスンを2回くらいしていただきました。その先生は本当にいい人で、おすすめです!
-すてきな出会いでしたね!他にはレッスン以外で何かされましたか?

A.T 他にはプールがあったので行ったのですが、水着がなかったので入れなくて。買ってもサイズが大きいものしかなくて全然だめでしたね(笑)。
-買い物はどちらで?

A.T ホテルから15~20分歩かないとスーパーがなくて、そこでしました。スーパーといってもパンくらいしか買うものもなく。ホテルには電子レンジもお湯をわかすものもないので、買えるものがジュース、水、お菓子、パンくらいになってしまいました。
近くにはカフェが2つと、ピザ屋さんなどのレストランもあるのですが、日曜日は全部閉まっていました。
-街の様子はいかがでしたか?

A.T 他の国の人にも優しくしてくれて、例えば横断歩道を渡る時でも車が止まってくれたりとか。信号が少ないので危ないのですが、「どうぞ」みたいに譲ってくれたり、知らないおじさんが挨拶してくれたり、パン屋で金額が聞き取れないと書いてくれたりとか、とても親切でした。
-治安はいかがでしたか?

A.T 夜は暗いというのはありますが、そんなに悪いとは思いませんでした。
-今回はウィーンにも行けたのですよね?

A.T 最初にピアノの人は日曜日は練習できないと言われたんです。日曜は全部休みだからと。バイオリンの人などはホテルの部屋で練習できるからいいのですが。どうせピアノを弾いてはいけないのだったらどこかに行こうかなと思っていました。
仲良くなったイランの子がいたのですが、その子もウィーンに行きたいと言っていて。その子もピアノだったので、だったら「一緒に行こうよ」と。英語が話せる子だったので、全部事務局と話をつけてくれました。最初は「日曜だと電車もバスも休みだから、行くのが複雑であなた達だけじゃどうかな」と言われ、諦めようとしたのですが、ちょうどその日曜が、講習会の第二期の人がウィーンから来るタイミングで、逆にホルンからも帰る人がいてシャトルバスが来ると。そこで、ホルンからウィーンに帰る人たちのバスに乗ってウィーンに行って、3時間だけですが観光をして、ホルンに来る人たちのバスに乗って帰ってきました。ラッキーでした(笑)。
-それはラッキーでしたね(笑)3時間でしたが、楽しめましたか?

A.T モーツァルトハウスとステファン寺院に行けました。
-それもお友達をつくってコミュニケーションをとっていたからですね。
結構な行動派ですね(笑)
A.T そうですね、行っちゃえ!やっちゃえ!みたいな(笑)
-ホテルの様子はいかがでしたか?

A.T ホテルという感じではありませんでした。日本のホテルとは違っていて、講習会の参加者しか泊まっていなかったので、寮みたいな感じでした。
-ホテルから講習会会場へはどのように?

A.T ホテルから徒歩3分くらいの所に小学校があって、そこでもレッスンをしているのですが、私の先生がレッスンをしている所は別の場所でした。なので毎日15~20分徒歩で往復です。慣れている子は自転車を持ってきていたり、キックボードを持っていたり。必要だと思いました。
-気温はいかがでしたか?

A.T 服装は日本と同じような感じで大丈夫でしたが、朝夜は少し寒かったです。周りはみんなTシャツに短パンというラフな感じで。日ざしが強かったので、サングラスは必要だと思いました。
-お食事はいかがでしたか?

A.T 朝ご飯はバイキングだったのですが、毎日同じでした。堅いパンとチーズとハムとシリアル。毎日それだったので、ちょっと飽きちゃったのですが。みんなスーパーでフルーツを買ってきて、それを持ち込んで食べたりしていましたね。
-カフェなどには行きましたか?

A.T カフェでも食べました。が、私が一番ビックリしたのは、パンやデニッシュ、アイスなどが並んでいるショーケースの中にハエや蜂がたくさんいて、商品にたかっているんです。「これを買うの?」と思ったのですが、店員さんも追い払う様子もなく、食べ物にハエがたかっていても普通なようでビックリしました。
-他に印象に残っていることはありますか?

A.T そこまではないですが、スーパーで、まだ買っていない商品をその場で飲んでいるとか、売り物のぶどうを1個試食して戻すとか、「え?そういうのいいんだ?!」というのはありました。
-海外の人とうまくつきあうコツはありますか?

A.T 積極的に話した方がいいというのは前から聞いていたのでそうしていたのですが、みんな英語がそこまで上手いわけではなく探り探りしゃべっているので、話を聞いてあげる姿勢が大事かなと思いました。お互いに。
-今回はA.Tさんもかなり積極的に?

A.T はい。ルームメイトもいい子で、いろいろ話してくれたり。今はみんなiPhoneを持っているので、共通の話題があって。facebookとかでつながりがあったりして。話の内容には困らない感じがしました。
-その方達とは今でもつながっていますか?

A.T はい、facebookとかLINEとかで。みんなやっているので。
-いいつながりが持てたのですね。
今回参加して、よかったなと思った瞬間はありますか?
A.T 毎日夜にコンサートがあって、クラシックもあればジャズのようなラフなものもあるのですが、そういうものを低価格でみれたことが良かったです。教会の中とか、日本では絶対味わえないような雰囲気もよかったです。
-留学してみてご自身が変わったと思うことはありますか?

A.T 私の他に、日本人で参加している方もいましたが、外国に来てまで日本人と関わることもないかなと思って、なるべく外国人と関わるようにしていました。積極的に違う国の人と話そうとすることや英語を使ってみることに最初は不安もあったのですが、ずっとしゃべっていく内に慣れてきて。ストレスにもならなかったですし、友達が増やせたのは良かったです。
-今後留学する方へのアドバイスはありますか?

A.T もしアレグロヴィーヴォに行くのであれば、積極的に話すのと、コンサートが楽しいので、録音機材などを自分で持っていった方がよかったかなと思いました。いい人たちばっかりです。小さい子では8歳とか、みんな若かったです。子どもでもマスタークラスに入っている子もいて。だからといってすごく上手いわけではないのですが、兄弟で参加している人も多く、姉妹でバイオリンチェロとか。家族連れも多いし、アジア圏が少ないというのも逆によかったかなと思います。
-他に伝えておきたいことはありますか?

A.T 日本食は絶対持っていった方がいいなと思いました。お米が売っていないし、チャイナレストランもあったのですが、そこまでバリエーションがなかったし、日曜日はお店が休みなので。自分で食べ物を持っていないと、雨が降ると買い物に行けなかったりして。
-今後の進路や活躍の予定などはありますか?

A.T いろんな曲、新しい曲を知ることができました。コンサートも室内楽が多くて、こういうのをやってみたいなと思うものが結構あって、そういうものを練習していきたいなと思いました。
-頑張って下さいね!応援しております。ありがとうございました。
戻る