迎ゆかりさん/ウィーン春期音楽&ダンス講習会

迎ゆかりさん/ウィーン春期音楽&ダンス講習会
7歳からピアノを始める。
2018年5月現在、活水女子大学音楽学部3年。
-まず簡単に迎さんの自己紹介と、現在までの略歴を教えてください。

迎様:活水女子大学音楽学部3年の迎ゆかりです。7歳からピアノを習っていて、大学2年の終わりの3月にこの講習会に参加しました。もともと大学入ってからドイツ語を履修しはじめてから海外に興味を持ち、音楽をするなら本場というか海外で、わからないなりに感じたほうがいいかなと思って、思い切って憧れていたウィーンを選びました。
-講習会はどのようなプログラムでしたか?他にはどのような参加者がいましたか?

迎様:3月3日に出発し、4日から10日が講習会でした。レッスンは4回、本番が2回あり、他には声楽の方が2人いました。
-それではほぼ1週間ウィーンで音楽漬けだったのですね。レッスンが4回ということだったんですけど、レッスンの先生はどんな方でしたか?

迎様:ヴァッツィンガー先生とゲルハルト先生のお2人から2回ずつレッスンがあり、シューマン=リストの『献呈』とJ.S.バッハの『フランス組曲』を持っていきました。ヴァッツィンガー先生はバッハに厳しいというか、スタイルをちゃんと丁寧に教えてくださって。ゲルハルト先生は、個人の意見を尊重というか、どう弾きたいのか、自分がどう表現したいのかをすごく聞かれる方だな、という印象でした。
-同じタイミングで2人の違う先生からレッスンを受けたことで今までと何か違う気づきや、あるいは大変なことはありましたか?

迎様:最初はヴァッツィンガー先生にご指導いただいて、クラスコンサートがあって、そのあとにゲルハルト先生で、あと最終の演奏会となったんですけど、その演奏会では2人から習った意見をどうまとめて自分のものにするかが大変でした。解釈が違ったので、それを自分の中で、どう自分のものにしていくか、整理しながら弾くのがすごく難しかったです。
-前半の先生と後半の先生で一部解釈が違うところがあったということで、整理していくときはどういうふうにして決めていったのですか?

迎様:もともと日本の大学で習っていた先生から教わっていたものと、自分がこう弾きたいと思っていたものをウィーンに持っていった感じでしたが、一旦忘れて、なるほど、こうすればいいんだと納得した部分だけを取り入れていく、という感じでした。
-それは大変でしたね。レッスン中は何語でコミュニケーションをとっていたのですか?

迎様:ドイツ語でした。通訳の方がいらしたので、初めは通訳の方に日本語を入れてもらっていたんですけど、だんだん単語などはそのまま伝わるようになりました。どちらの先生もよく日本人のレッスンをされているようで、「右、左」とか、「1、2、3」とかは日本語で言ってくださったりしました。
-なるほど。では1回目のコンサートについて教えてください。

迎様:最初のコンサートは日本の参加者の3人と、あと現地でお世話してくださったスタッフさんと、あとは声楽の伴奏の方のみクラスコンサートでした。参加者同士で聞きあうみたいな感じでしたね。
-2回目のコンサートはいかがでしたか?

迎様:こちらはハウス・デア・ムジークという音楽博物館のエントランスでのロビーコンサートで、色々な方が出入りする開放的な感じでした。
-現地の人を前に弾くにあたり、日本との違いとかありましたか?

迎様:本番で弾いた『献呈』はもともとドイツ語の声楽曲で、本場の言葉というかドイツ語を話されている方が聴かれるのと、全く知らない方が聴かれるのではまた違うなと思いました。また、声楽の先生がその本番にいらしたので、その声楽の先生の前ピアノで弾く緊張感と、憧れていた場所で弾けるという緊張感とがあり、日本とは全然違いました。
-現地ならではの緊張感があったのですね。ちなみに練習はどのようにしていたんですか?

迎様:ホテル近くのクラウディアギャラリーという練習室を使っていました。時間はレッスン前に1時間、レッスン後に2、3時間ほどでしょうか。ヴァッツィンガー先生のバッハの解釈の仕方が、日本で習ったものとはかなり異なったので、とにかくレッスンで言われたことを忠実に自分のものにしようと思って、日本で習ったことはとりあえず置いておいて、言われたことを楽譜とにらめっこしながらずっと細かく練習していた感じでした。もう1曲の献呈も、とにかくレッスンで言われたことを次までにできるように練習していましたが、あっという間に時間が過ぎました。
-バッハの方が苦労されたような印象を受けるのですが、実際はいかがでしたか?

迎様:そうですね。通訳の方とお話する時間があって、実は通訳の方も自分がウィーンに行ったときに同じことを言われた、とおっしゃられていました。レッスンでもヴァッツィンガー先生が「こういうところは日本の先生は教えないんだ」などとお話されていて。日本から持ってきた楽譜と先生の楽譜の違いに関する指摘からレッスンに入ってきました。帰ってすぐに、バッハだけじゃなくて、リストとかも出版社ごとに楽譜を見比べたりしました。
-レッスンや練習以外の時間はどのように過ごされていましたか?

迎様:基本一人行動だったんですけど、レッスンや練習の間などは、声楽の2人と待ち合わせて、夜ごはんを一緒に食べたり、近くのウエストバーンホフの駅をぐるぐる回ったり。ショッピングセンターにもよく行っていました。他にはハイリゲンシュタットにも行きましたね。
-街並みも海外が初めてということだと違いもあったかと思うのですが、人々の様子とか治安面はどうでしたか?

迎様:移民の多さと観光客の多さにびっくりしました。白で統一されている街並みなども日本とは本当全然違いました。
-滞在中の宿泊先はいかがでしたか?

迎様:ホテルでした。到着すぐの土日は雪が降ってそれ以降は暑くなり、気温差が大きかったのですが、空調のやり方がわからず、着るもので調整していました。それ以外は基本的に不自由なく過ごせました。声楽の方のうちの1人は向かい部屋だったので、朝ごはんなどをたまに一緒に食べたりはしていました。
-当日、移動は鉄道を使っていたんですか?

迎様:はい。ホテルからウエストバーンホフがもう目の前で大学までも2、3駅ほどでした。私の場合、レッスンも練習室と同じクラヴィアギャラリーだったこともあり、レッスン関係はウエストバーンホフまででコンパクトでした。
-練習とレッスンが行われたクラヴィアギャラリーはいかがでしたか?

迎様:最初、初めて見たピアノが、4本ペダルのピアノだったので、これがウィーンの洗礼かなと思いました(笑)。先生もびっくりされていました。
-なるほど。ちなみに現地の食事はお口に合いましたか?

迎様:はい、おいしかったです。シュニッツェルもそうですが、一つ一つ量が多く感じました。値段も日本よりすごく安い・高いという印象はなくて、一緒ぐらいだったと思います。でも、日本みたいに自動販売機もなく、水も1本300円近くして、いざ欲しいとなったときに困りました。
ウィーンでは日本にないようなものを食べようと思っていましたが、反対に日本にもあるようなマクドナルドやスタバも行ってみて、比べて楽しみました。
-どう違いましたか?

迎様:マクドナルドは日本だとケーキってないですよね。ウィーンにはマックカフェがあって、チーズケーキやザッハトルテなどのケーキも売っていました。スターバックスは、日本では期間限定で果物の飲み物なども売っているパワフルなイメージがありましたが、ウィーンは日本と比べてお店の雰囲気も落ち着ているように感じました。
-海外の現地の人とうまくコミュニケーションとる工夫とか、あるいは困ったこととかありましたか?

迎様:現地の人といっぱい話すということはありませんでしたが、観光中に演奏会の案内をするお兄さんたち「チケット買いませんか?」と話しかけてきて、そのときに一番現地で話しました(汗)。観光で行くなら英語ができたほうがよくて、でも勉強で行きたいならドイツ語ができたほうがいいなと思いましたね。ヴァッツィンガー先生に習っていた日本の方が言われていたんですけど、最初は英語交じりでやっていたけど、ある時から一切禁止になって、ドイツ語にされたそうです。日常会話は英語でも乗り切れるかもしれないけど、先生がちゃんと言いたい言葉はドイツ語で話されるから、そのままダイレクトに受け止めたいと思ったらドイツ語がいい、といった話をしてくださって、なるほど、と。
-説得力がありますね。その他、現地で困ったこととかってありました?

迎様:基本的に数字が聞き取れれば、チケットの購入などを含め困ったことはありませんでした。でもやっぱり、自分が本当に言いたいことはなかなか伝わらない、っていうのはありましたね。
-今回の講習会で一番印象に残っている場面や瞬間はありましたか?

迎様:レッスンのことはすごい記憶には残っています。滞在中一番思ったのは、日本人は冷たいかな、みたいな。外国の方のほうが、お店でお買い物をする時など、初対面でもコミュニケーションとり合うという違いがとても印象深かったです。
-それは日本のホスピタリティ的なものとはまた違うコミュニケーションの具合だったんでしょうね。

迎様:初めての人に対しても距離感近いかなと。観光客だったということもあるかもしれないですけど。
-今回の留学を通じて一番変わった、成長したとご自身が思われる部分はありますか?

迎様:今まで日本でしか過ごしていなかったので、フランス音楽やイタリア音楽など、もっとほかの海外にも興味を持つようにはなりましたね。視野が広くなったというか。
-次にどこ行きたいというのも出てきましたか?

迎様:イタリアですかね。
-初めて留学をしようと思われている方へアドバイスというか、伝えたいことはありますか?

迎様:こうだったらどうしようとか心配したら始まらないので、とりあえず思ったことを行動に移すことが大事だと、留学に行ってからずっと思いました。こんな私というか、海外行ったこともないし英語もドイツ語もそんなしゃべれなく、ピアノの技術面の自信もない中で、音楽をやるからには現地の、その音楽が生まれたところを見ておきたいという気持ちがあっただけで行ったので。
-留学を振り返って、こういうことやっておいたほうがよかったかな、あるいは今度留学をするにあたりこういうことやりたいな、ということってありましたか?

迎様:言葉の準備と現地調査でしょうか。私の場合はドイツ語をとっていたので、とにかく自分のことを名乗れるぐらい取得しておこうと言葉の準備をしていました。観光地とか、レストランとか、そういう振る舞い方というか、日本と違うマナーみたいなところも、もともと興味があって調べてから行きましたね。作曲家のゆかりの場所などすごく調べていたので、ウィーンは街中にいっぱいそういうところがあるので見逃せて行けたのは良かったな、と。名所や歴史とか調べて行ったら、現地に行ったときにすごい楽しく、スルーすることなくできるかなと。
-最後に、今後の活動や進路の希望についてお知らせください。

迎様:3年生になってからは、学校での本番の機会もいただくことも多くなり、ウィーン留学でやる気が出たので、海外のコンクールに挑戦しようかなと考えています。今のところ就職は音楽関係でやっていきたいと思っているので、本番もたくさん出られるように、卒業するまで活動していきたいです。
-応援しています。インタビューへのご協力をありがとうございました。

戻る